−1年生編−

□第4話〈廃屋のシンデレラ〉
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悪魔が愛したお人形


彼女とキスしたいひと

この指 とーまれ!


     第4話
〈廃屋のシンデレラ〉


「レギュ、ラス…」

マリはぽつりと呟いた。

スリザリンに選ばれた片割れは、寮のテーブルに向かっていく。


目、合わせてくれなかった――…


レギュラスは、一度もこちらを見なかった。

今もなお、グリフィンドールに背を向けて座っているのでその表情はうかがえない。


ああ、どうしよう

私、レギュラスに――…


シリウスがグリフィンドールになったと知った時の彼の反応を思いだし、じわりと涙が浮かんだ。


「…マリ、」

隣で声がした。

うつむいていた頭をあげると、シリウスがいた。

何か言いたげに口が動いたが、結局何を言うこともなく、マリの頭に手を置いた。

「シリウス、私…」

「ん」

シリウスは大丈夫だ、と言うように頷いた。

実際は、なんにも大丈夫じゃなかったが。


「組分け、終わったみたいだな」


シリウスが言ったその時、

教員席から 半月形の眼鏡をかけ、銀色の髭をたくわえたアルバス・ダンブルドアが立ち上がった。

「まずは新入生諸君、ホグワーツへようこそ!そして在校生のみんなには、おかえりなさいじゃ!
さあ皆の衆、祝福のご馳走をたらふく食べるがよいぞ!」

ダンブルドアが言い終わると、あっという間にテーブルにご馳走が乗った。

マリはあまり食欲がわかなかったが、ローストビーフを一口食べると自分がかなり腹ペコだったことに気がついた。

「…おいしい」

シリウスはほっとしたように、マリの頭を再度なでた。

「へえ、マリはローストビーフが好きなんだね!このポトフも食べる?僕のお気に入りなんだ!」

マリの目の前で、聞き覚えのある声がした。

顔をあげると案の定、ポトフを差し出すクセっ毛メガネ。

あれ、いつの間に?

ジェームズが目の前にいたことなど、気がつかなかった。

あれほど前方のスリザリンを気にしていたのに、とマリは 自分の余裕のなさに苦笑した。


「ほら、早く受け取って!僕 腕が疲れてきたよ」

「あ、ありがとう」

半ば強引にポトフを押しつけられ、仕方なしに受けとる。

そしてローストビーフを脇によせ、ポトフに口をつけた。

「…これ、」

本当に、おいしかった。

マリはたまらず、食べ進めた。

ジェームズはその様子に満足そうに優しく笑った。


「元気でたかい?」

「え?」

ジェームズは自身もポトフに手をつけながら、言った。

「君、組分けされてから落ちこんでたみたいだったからさ」

心配したよ。

ジェームズの言葉に、マリは瞳をわずかに開いた。
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