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□在りし日の君へ
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貴方の世界が優しいものであるように、貴方の笑顔が曇ることのないように。
そして出来ればその笑顔の先に、私がいたらいいな
声を上げて笑う貴方の隣で、ずっと一緒に笑っていたい
ただ、ただ、そう祈り続けていた
――――――………
ホグワーツを卒業して数ヶ月の頃、俺のもとに一通の手紙が届いた。
送り主は、自分のよく知る相手。
マリ・レインズワース
封筒を見ただけで即座に理解した。
あぁ、あの知らせか…
目を通しても、やはり、と確信しただけで驚きはしなかった。
普段と同じような調子で、何てことのないように告げられた“婚約”の知らせ。
俺は、苦笑した。
『シリウス、お元気?
前にも伝えておいたと思うけど、一応報告するわね。
あたし、婚約したの!
本当に、本当に幸せよ。
シリウス、寂しいならいつでも会いにきてね。
待ってるから!』
寂しいのは、お前のくせに。
昔から素直でない彼女のこういう発言には、もう慣れっこだった。
俺はひとりで「ばーか」と呟き、手紙をしまった。