Short

□25時と366日目の世界
1ページ/6ページ



限りなく愛に近い嘘と、

限りなく嘘に近い愛

――「愛してるって、言ったら殺す」――


  真実はどこへ消えた  


――――……


世の中には、必ずしも理不尽や不条理な出来事があるものだ。

例えばそれは、自分ではなく近親者の行為によって被害を被ってしまったり、
はたまた“イメージ”という身勝手極まりない相手の妄想で、全て見定められたかのように振る舞われたり。

バッシャアアアンッ


ここにもまた、そんな無慈悲な現実に耐え続ける少女がいた。


「あはははっ!エリスったらやり過ぎよっ」

「あら、いいじゃない?だってこの子、血なまぐさいんだもの!」

「やぁだ、エリスったら!」

背の高い女子生徒に囲まれて、一人髪や袖から水を滴らせている少女は、静かに拳を握りしめた。

「言いたいことがあるんなら言えば?」

「……」

「エリス、そろそろ授業が始まるわ。それに…」

取り巻きの一人、ルーシー・ガントが意地悪く笑い、言った。

「あんまり近づき過ぎると、“アバタケタブラ”発動するわよ、この子!」

辺りに甲高い笑い声が響き渡った。

少女は一人、徐々に広がっていく足元の水溜まりを見つめる。

――どうして、どうして…

その時、チャイムが鳴り響いた。

女子生徒達は笑い声を響かせながら、足早にその場を離れた。


エリスと呼ばれた美少女は、ゆっくりと少女を振り返り、言い放った。


「せいぜい頑張って乾かすといいわ、じゃあね…“灰かぶり”ちゃん」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ