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□春期限定パステル戦争
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「くそっまたお前らか!!待てー!罰則にしてやる!!」

「「やーなこった!」」


―――…

よっ、俺は今年ホグワーツに入学したばかりの一年生、ジョージ・ウィーズリー。そして隣のこいつは双子のフレッド・ウィーズリーだ。

今日もまたイカす悪戯を仕掛けたんだけど、邪魔者フィルチに見つかって、追いかけられてるとこなんだ。

「ふーっ、ようやく談話室までたどり着いたな!」

「ジョージ、クソ爆弾まだ残ってるか?」

俺はゾンコの紙袋の中を覗いたけど、今日の盛大な悪戯のおかげで、あれだけあったクソ爆弾はひとつも残っちゃいなかった。

「カラッカラだぜ、相棒」

「お、また買い出しに行かなきゃな」

その時、俺の視界は真っ暗になった。しかし顔に触れる柔らかい感触と微かに香る甘い香り、何より背後から聞こえてきた優しげな声に俺の心臓の鼓動は一気に早まった。

「だーれだ?」

「…マリ!」

俺の目を覆っていた手を外し、振り向くとふんわりと笑ったマリが立っていた。彼女は同じ寮の7年生で、俺達の兄貴ビルと同学年の美少女。
あーやばい、今日も死ぬほど可愛い。

「マリ!今日は髪の毛おろしてるんだな!」

「結んでてもかわいいけど、おろしてるマリも最高だよ!」

「いつから俺らの後ろにいたの!?」

「「早く声をかけてくれれば良かったのに!」」

俺とフレッドが交互に言うと、マリは困ったように、照れたようにまた微笑んだ。ちなみに、俺達の掛け合いは別に狙ってやったことじゃない。本当は俺だけがマリの良さを語っていたいんだけど、俺とフレッドは何でも一緒。きっとマリに対して思ってる気持ちも、きっと同じなんだ。

「二人とも、またフィルチを怒らせたんでしょ?もう、駄目って言ったじゃない」

マリはプクッと頬を膨らませて俺とフレッドの鼻を軽く指で弾いた。かわいいけど、これは子供扱いされてるみたいでちょっといただけない。年齢の割りに長身な俺達と比べてもマリの方が背は高いから仕方がないことなんだけど、やっぱり男として見られてないみたいで悔しい。早く、追いつきたいのに。

「だってさ、あの怒り狂ったフィルチの顔、最高にウケたんだよ」

「罰則を受けるのはあなたたちなのよ?」

「俺達はつかまんないし!それに、」

俺はまっすぐにマリを見上げた。(見上げたってのが気に入らないけど。早く見下ろしたい)

「こうでもしないと、マリ、俺達にかまってくれないじゃん」

マリは目をまんまるくして見つめ返してきた。そしてまた、ふんわりと笑う。

「やぁね。悪戯なんてしなくても、二人の友達をやめたりしないのに」

「そう、だけどさ…」

その時、パッと談話室のドアが開いてチャーリーとパーシーが入ってきた。

「チャーリー!聞いてるのか!?だいたいなんで素手でドラゴンを…」

「悪かったよパース、でもあのドラゴンは上等だ。飼いたいくらいだよ」

「あら、パーシーにチャーリー!」

「マリ!」

二人はマリに気がつくと、顔を一気に綻ばせた。いつも仏頂面のパーシーでさえ。面白くない。

「フレッド、ジョージ!お前達、またマリに迷惑をかけたんじゃないだろうな!?」

「へっ迷惑なんてかけてねーよ!」

「パーシーが来るまで、俺達ずっとラブラブだったんだからな!」

「ラブラッ…!?」

純情少年パーシー君はラブラブがお気に召さなかったらしい。顔を赤くして叫んでいるパーシーをよそに、マリはチャーリーの手を見て悲鳴を上げた。

「チャーリー!ど、どうしたの!?この怪我は!」

「ちょっとヤンチャな子を素手で触っちまってな。マリ、手当てしてくれないか?」

「もちろんよ!救急箱を持ってくるわね」

マリはそう言うとパタパタとあわただしく女子寮に走っていった。
横でフレッドが、「チャーリー、ずるいよ!」と叫んでいる。本当、そうだ。
チャーリーは色恋沙汰には興味はないようだけど、それでもマリのことを見るときは、明らかに他の女の子を見る目とは違う。

俺だって、同じようにマリが好きなのに。それなのに、俺と違って、二人並ぶと絵になるのが気に入らない。

その時、またパッと扉が開いた。

「お、全員集合みたいだな」

俺は思い切り顔をしかめた。こんな時に…最悪だ。

俺にとって最大のライバルで敵で魔王な兄貴、ビル・ウィーズリーのご登場だ。
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