□夫婦のカタチ〜織姫奥様の受難〜
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《夫婦のカタチ〜織姫奥様の受難〜》



「…く〜っ!美味い!」
「恋次…ルキアがいないと思って、随分いい飲みっプリじゃねぇか。」


今夜は、恋次くんが乱菊さんから貰ったっていう美味しいお酒を手土産に、遊びに来ています。

ルキアちゃんは「死神協会・女性部の会」があるとかで、遅れてくるんだって。


「んだよ一護、もうギブアップか?」
「んだと?そんな訳ねぇだろ、まだまだイケるっての。」


そう言いながら、缶ビールをぐいっと煽る一護くん。

私はお酒の美味しさとかはよく分からないし、ちょっと飲んだだけで酔っぱらってしまうから、一護くんの隣で専らジュースを飲んでいます。



それにしても…。



何だか、二人のお酒を飲むスピードが速い気がする。

机の上には、恋次くんの差し入れのお酒以外に、ウチにあったビールやチューハイの空き缶がいくつも並んでいる。

明日は一護くんも恋次くんもお仕事はお休みだって言うし、いつも頑張ってる二人だからたまにはちょっとぐらい羽目をはずしてもいいのかな、って思うけど…。

でも、お酒の「ちゃんぽん」は酔いやすい、って聞いたことがある気がするし…。

「何だよ一護、もう顔が赤くねぇか?」
「ばぁか、お前の頭ほどじゃねぇだろ。お前こそ、目が座ってきてんじゃねぇの?」
「お互いに目付きが悪いのは生まれつきだろ。」


はじめはお酒を片手に楽しく3人でお喋りしていた筈なのに、いつの間にか一護くんと恋次くんがお酒を飲む競争みたいになってしまった。
二人とも負けず嫌いだから…。

テーブルの上にはどんどん増えていく空き缶。

そろそろストップかけないと、不味いかな?
うん、ルキアちゃんも心配するだろうし、ね?

「…ねぇ、二人とも、そろそろお酒は休憩にしない?あの、良かったらおつまみも沢山食べて!ね?」

とりあえず、興味をお酒以外に移してもらおう!
せっかく頑張って沢山お料理作ったんだもん!

…まぁ、二人が飲んでる間にほとんど自分で食べちゃいましたけど…。

「おう。じゃあ遠慮なくもらうぜ。…しかし、織姫は料理が随分と上手くなったよな。」
「本当?!ありがとう恋次くん!」
「…だから、お前は『織姫』って呼ぶなって言ってんだろ。」

そう言う一護くんが、私の腰に手を回してぐいっと抱き寄せて…って、ええぇっ?!

「い、一護くん!恋次くんの前だよ!」
「別にいいだろ、俺達夫婦なんだからよ。」

私をちらりと見る一護くんの目が、いつもと違う。
…ああ、完全に酔ってるんだ。
照れ屋の一護くん、いつもなら人前でこんなこと絶対にしないのに。

「んだよ、ルキアがいないからって、見せつけるのか?」
「おう。羨ましいだろ。俺の織姫は世界一の嫁さんだからな。」



…え?今、なんて…?



耳を疑うような旦那様の言葉に、お酒を飲んでもいないのに真っ赤になる私。

…けど。


「んだと?俺のルキアが世界一だ!いくら織姫でもそこは譲れねぇな!」
「…織姫がいちばんだって言ってんだろ。お前だってコイツの料理が美味いって言ったじゃねぇか。」
「ルキアだって、その気になりゃ美味いモン作るんだよ!ただ、普段は召し使いがいっぱいいるから、その必要がないだけだ!」


…どうしよう。

一護くんと恋次くんが、今度はお嫁さん自慢で勝負を始めてしまいました。


「ルキアには漂う気品ってモンがあるんだよ!あれは一朝一夕には身につかないからな!」
「織姫は癒し系なんだよ!俺は仕事がキツい時にも、毎日コイツに癒されてんだ、文句あるか!」

…ああ、でも。

何だか、ちょっと幸せ。

一護くんが、こんな風に思ってくれてたなんて。

恋次くんも、きっとそんなことルキアちゃんには伝えてないでしょう?


「織姫は知り合いの誰に会わせたって『こんな美人で性格もいい嫁さん羨ましい』って皆が口を揃えて言うんだぜ?!」
「ルキアだって、こっちじゃ隊員から『才色兼備で皆の憧れの的・高嶺の花だ』って言われてんだよ!」


子供みたいに言い合う二人を、一護くんに抱き寄せられたまま眺めて。

彼が放つ一言一句に、ドキドキして、ぽぉっとなる私。

何だかお酒にちょっとだけ感謝かな?…なんて思っていた、そのとき。


「…それにな、織姫は作る料理も美味いけど、コイツ自身もメチャクチャ美味いんだよ!」




…はい?






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