□夫婦のカタチ〜織姫奥様の受難〜
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「…あの…い、一護くん…?」
言ってる意味が、よく分からないんですけど…?
「ああ?一護テメエ、織姫がちょっとばかし胸がデケェからって自慢すんのか?!」
「ちょっとじゃねぇよ!俺の手で掴んだってこうムニッと『おつり』がたんまり出るくらい…。」
「お、おおおつり?!」
ち、ちょっとちょっとちょっと―っ!
「い、いいい一護くんっ?!」
「このふっかふかの抱き心地といい、お前には一生味わえねぇだろうな!」
そう言って彼の口を塞ごうとする私をがっちり抱き締めて…って、ええぇっ?!
「い、一護くんっ!人前だよ、ねぇっ!」
「んだと?!お前こそ、ルキアがこうすっぽりちょうどよく手に収まるあの感じの良さが分かってねぇだろ!」
「れ、恋次くんもやめて〜っ!」
一護くんの腕の中でじたばたしてみても、私の力じゃ彼の腕はびくともしなくて。
二人は酔っぱらってるせいか、会話がどんどんエスカレートしていく。
「ルキアはなぁ、ああ見えて布団の中じゃめちゃくちゃ可愛いんだよ!」
「織姫だって可愛いんだっつーの!あの気持ちいいクセに必死に声を抑える恥ずかしそうな顔なんか特に…。」
「き、きゃああっ!」
「ルキアは普段とのギャップがいいんだよ!ああ、お前には味わえねぇだろうなぁ。」
「織姫だってギャップぐらいあるっつーの!この清純そのもののコイツがベッドの中じゃ俺の言いなりでアレコレと…。」
「や、やめてぇぇっ!」
私の必死の叫びに、一護くんの言葉がぴたりと止まる。
ああ良かった、やっと通じたんだ…。
ほっとして彼の顔を見上げれば、バチっと目があった一護くんは、座った目でにっこり笑って。
「この間なんか『料理失敗したお詫びに何でもする』って織姫が言うから、俺が裸エプロンねだったらちゃーんとしてくれたもんなー?」
「…!!」
…そ、そ、それだけは言っちゃだめーっ!
「は、俺だってルキアの着物の帯を引っ張ってクルクル回して『あーれー』ってヤツやったことあるぞ?!」
恋次くんもそれ絶対言っちゃだめーっ!
「…ねぇ、もうやめようよ、ね…?ぐすっ…。」
あんまりにも恥ずかしくて私が半泣きで訴えたら、二人ともさすがに気まずそうになって。
「…ま、まぁ…そうだな、夫婦はそれぞれだしな?」
一護くんが私を宥める様にぽんぽんと背中を叩きながらそう言った。
…ああ、よかった、今度こそ通じたんだ…。
「…けど、アレだぜ?織姫は初めての時はめちゃくちゃ恥ずかしがるし、痛がって泣くしで大変だったんだぜ?」
「…ああ、分かる分かる、俺のトキもそりゃあ必死に宥めてよ。」
ああ、神様の意地悪…。
…喧嘩は確かに終わったけど…。
…肝心なことが全然通じてないです…。
「ルキアはとにかくニブいからな、俺がサイン出しても全然気付かなくてよ…最後にはもう実力行使みたいな?」
「分かるぜ、織姫も本当に鈍感でさ、俺が組み敷いてもきょとんとしてたりしてさ…お互い苦労するよなぁ?」
…一護くんと恋次くんの間には奇妙な連帯感が生まれていて。
得意げに笑う一護くんの腕の力が緩んだ隙に、私はするりと彼の腕から逃げ出した。
「…あぁ、ど、どうしよう…。」
そう嘆きながらベランダの方を見れば、そこには仁王立ちしている人影が。
「ル、ルキアちゃん!」
よかった、助かった!
私は思わず彼女に抱きついていた。
ルキアちゃんは、私の背中をよしよしと撫でてくれて。
「すまなかったな、織姫。会合が延びて遅くなってしまったのだ。」
そう優しく微笑んだルキアちゃんの目は、リビングの二人に向いた時は既にきつくつり上がっていた。
「…本当に、すまなかった。あんな下等生物二人の相手をさせてしまって…。」
一護くんと恋次くんを睨むルキアちゃんから、ゴゴゴ…って怒りのオーラの音がする。
でも、二人はルキアちゃんには全然気が付かないで、お話に夢中。
「…まぁ、そこから俺の色に染め上げるつーのがいいんだけどな?」
「ああ、分かる分かる。こう、少しずつ仕込んでく男の幸せってヤツ?」
ルキアちゃんが「はぁ〜っ」と呆れた様に溜め息をついて袖白雪を構えたから、私はビックリした。
「…ル、ルキアちゃん!」
「何だ?止める必要はないぞ。」
「ううん、そうじゃなくて…今から三天結盾を張るから、できたらその中で…後でお部屋の片付けが楽な様に。」
「…承知した。」
ニッ…と笑ったルキアちゃんは、袖白雪をチキ…と鳴らした。
「さて、織姫。今から二人で楽しく女子会といこうではないか。」
「うん!ルキアちゃんのためにちゃんとスイーツとっておいたんだ!」
ルキアちゃんのお仕置きを受けてすっかりのびてしまった旦那様二人はリビングの隅に転がしておいて。
ルキアちゃんと二人で奥様の時間を楽しみました!
(2013.10.03)