□おやすみなさい、あしたはおはよう
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「…井上。」
ベッドに並んで腰掛けて。
黒崎くんの手が、ゆっくりと私の肩を抱き寄せる。
それだけで、今にも壊れてしまいそうな程に強い鼓動を打つ私の胸。
「…ん…。」
そっと押し付けられる、黒崎くんの唇。
私は角度を変えて繰り返されるキスを受け止めながら、身体の震えが唇越しに伝わってしまったらどうしよう…って、心配で。
無意識の間にきゅっと両手を握りしめていたことに、黒崎くんの大きな手が重なって初めて気が付いた。
「…井上、ガチガチ。」
そう言う黒崎くんが少し困った様に笑うから、私は慌てて首を左右に振って見せた。
「だ、大丈夫ですぞ!」
「…本当にか?」
念を押す黒崎くんに、私は今度は必死でこくこくと首を縦に振って見せる。
だって、黒崎くんがこんなに優しいのに。
黒崎くんのことを、こんなに大好きなのに。
…怖いことなんて、ない。
「…そっか。」
黒崎くんは小さくそう呟くと、私の着ているTシャツに手をかけて。
そのまま上へ上げようとするから、私は咄嗟にそれを押さえつけてしまった。
「え、ええっ?なに?」
「いや…その…脱がそうかと…。」
気まずそうな黒崎くんの顔は真っ赤。
そりゃ、服を脱がなくちゃいけないことぐらい、私だって知ってる…けど…。
「あ、あの、自分で脱げます!」
自分で脱いだ方がまだ恥ずかしさが緩和される気がして、私は慌てて自分のシャツに手をかけた。
「…いや、こういう時って、男が脱がすモンじゃねぇの?」
「…え、そ、そう…なの?」
私がきょとんとすれば、黒崎くんが私の手をゆっくりとほどき、再びTシャツに手をかけた。
「…えっと…手、上げてくんねぇ?脱がすから…。」
「ふ、ふぇっ?じゃ、じゃあ、その…。」
黒崎くんに言われるがまま、小さい子がする様に万歳する私。
そのまま、シャツをスポッ…と脱がされて。
何だか黒崎くんがお兄ちゃんみたいで、くすぐったかった。
そのままギュッて抱き締められたら、恥ずかしいのに甘やかされてるのが嬉しくて。
私は素直に黒崎くんに身体を預けていた。
「…何か、子供みたい。」
「ばーか。どんだけ発育のいい子供だよ。」
クスリと笑う私の背中を黒崎くんの手が探る様に動いて。
やがてプツンッ…て小さな音、窮屈だった胸がふわりと解放される感覚。
「…あ…。」
やっと黒崎くんの意図に気付いた私が慌てたけど、もう遅くて。
私の身体が少し離れた隙に、黒崎くんはするりと私のブラを抜き取った。
「わ、わわっ…!」
「…本当、デカイな…。」
咄嗟に胸を隠そうとした私の両手を、黒崎くんの両手が阻む。
露になった自分の胸に、黒崎くんの視線が絡み付いたのが解って、身体に火がついたみたいに熱くなった。
「…ワリィ井上。我慢できねぇ。」
「…え?黒崎く…っ!」
名前を呼び終わらないうちに塞がれる唇。
私の身体はそのままベッドへと押し倒されて。
「…ん、んんっ…!」
さっきとは違う、深くて激しいキス。
黒崎くんの舌が、私のそれに絡み付いてくる。
「…ふ、ふぁっ…!」
上手く息が継げなくて、ぞくりと背中をかけ上がる何かに戸惑って。
いつも受け入れ、追い付くのに必死な私。
「…は、はぁっ…。…っ!」
漸く長いキスから解放されて。
まだくらくらする意識を急に引き戻したのは、私の胸をたどり始めた黒崎くんの手。
「…あっ…!」
反射的に溢れる声。
黒崎くんの両手が、私の胸を包む。
長い指が、きゅっと食い込んで…でも、痛くない。怖くない。
「…井上…すげ、柔らかい…。」
「…んっ…!」
ゆっくり、ゆっくりと動く黒崎くんの手。
なんでだろう。
こんなに恥ずかしいのに…全然嫌じゃない、なんて。
どうしよう。
…イケないことしてるって思いながら、心のどこかで「幸せ」って、思ってしまうなんて。
「…あっ、あぁっ…!」
けれど私の思考を強制的に断ち切る様に、黒崎くんの指が胸の先端へと辿り着く。
「きゃあんっ…。」
「…井上…大丈夫だから…。」
先端を指先で転がしながら、私を宥める様に黒崎くんが耳元で囁く。
そしてその声に優しさにちょっとだけ安心したのも束の間、今度は黒崎くんの唇が胸の先端に下りてきて…。
「ひゃっ…!」
ちゅく…と響く濡れた音、胸に走る甘い刺激。
「く、黒さ…あ、あぁっ…。」
黒崎くんの手が、指が、唇が、舌が。
…私の胸の輪郭を、先端を、辿る。
もう、感覚に意識が追い付かなくて。
ただシーツにしがみついて首を左右に振るしかない私。
「…は、はぁ…ん…。」
やがて、黒崎くんの頭が胸から離れて。
強すぎる刺激にギュッと目を閉じていた私が恐る恐る目を開ければ、私を真っ直ぐに見つめる黒崎くんが映った。
それは今まで見たことのない表情で。
…ああ、黒崎くんは「男の人」なんだって…今更思ったりした。
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