□10→0
3ページ/5ページ







「井上…いいか?」

そう尋ねておきながら、井上からの返事よりも先にその華奢な身体を組み敷いて、脚を開かせて。

彼女を逃がさない様に…と俺が僅かに体重をかければ、ギシッ…と低い音を立てるベッド。

井上はその音に、ふるり…と小さく身体を震わせて。
それでも、覚悟を決めた様に、こくりと顎を引いた。

「…んっ…い…痛っ…!」
「ヤベ…きっつ…!」

彼女の入り口を、俺自身で探り当てて。
まだ、誰の侵入も許したことのない井上の狭いそこに、ゆっくりと俺自身をねじ込んでいく。

…けれど、相当に痛いのだろう。

涙を滲ませ、ベッドのシーツを引きちぎってしまいそうな程にぎゅうっ…と握りしめる井上。

懸命に痛みを堪えるその痛々しいまでの姿に、はっとした俺は思わず腰を進めるのを止めた。

俺は、何をしてるんだ?

まだ17歳の井上。
大丈夫だ…そう口では言いながら、きっと本心ではひどく怯えているに違いないのに。
なのに俺は、いい歳をしながら己の興奮と欲望のままに彼女を…。

「…井上、ごめんな。今日はもう…。」

急速に俺の中で膨らむ、罪悪感。

井上の頬をそっと俺の手で包んで、流れる涙を拭って。
今日はもう、ここまで俺を受け入れてくれただけで十分だ…そう俺が告げようとすれば、痛みを堪える為にキュッと結ばれていた井上の唇が、僅かに開く。

「…やめ、ないで…。」
「…え?」

井上は、震える唇で「止めないで」ともう一度繰り返して。
涙をポロポロとこぼしながらも、ふわりと俺に笑いかけた。

「…私…嬉しいの…黒崎くんと1つになれて…。」
「井…上…。」
「私…ずっと自信がなかったから…。だから、黒崎くんに、ちゃんと『女』として見てもらえてるんだ…って…私…嬉しくて…。」
「…井上…けど…!」
「本当に、大丈夫だよ…黒崎くんなら…だから、ね…。」

そう言って、痛みすらも幸福なのだ…と微笑む井上。
その笑顔は、17歳の無邪気なそれではなくて、俺なんかよりずっと「大人」の顔をしていて。

俺は彼女の覚悟を受け止め、一つ頷いて見せると、井上に全てを埋め込んだ。

「…っ……!」
「…井上…っ!」

刹那、俺の身体中を突き抜ける、快感と幸福感。

井上に内側からきゅうっ…と締め付けられる、この感覚は。
苦しいまでに胸を締め付ける、この想いは。

…俺と井上の距離がゼロになった、証。

ああ、年の差なんて、関係ない。

だって俺は…『井上織姫』という『存在』を…愛してるんだ…。

「井上…やっと…手に入れた…。」
「うん…。」
「井上…もっと…もっと近くに来いよ…。」
「うん…。」

繋がったまま強く抱き合えば、ぴったりと密着する俺の肌と井上の肌。

10年もの間離れていた井上との距離を、これ以上ないほどにゼロにする。

「なぁ井上…もっと…奥まで…欲しい…。」
「う、ん…して…あ、ああっ…!」

こんなに身体中で井上に触れているのに、尚貪欲に井上が欲しくて。

俺がゆっくりと腰を動かし始めれば、井上は俺にしがみつき悲鳴とも喘ぎともつかない声を上げ始めた。

「…井上…まだ痛い、か?」
「へ…き、だい…じょ…ぶ、あ、ふぁっ…あん…!」

多分、与えられる刺激が痛みなのか快楽なのか…その境界線すら、井上にはよく分かっていないんだろう。
それでも、俺を必死に受け入れようとする井上と、確かに俺自身を包み込む彼女の小さな花弁。

そんな健気な井上に、10年の間に募らせた想いが胸から一気に溢れ出しそうになって。
…なのに、『愛しい』、それ以外の言葉が見つからない。

「井上、井上…!」
「ふやぁ、あ、ああっ…!」

やがて、艶やかさを帯び始める井上の声。

あれほど狭かった井上のナカも、いつしか俺を呑み込む様に受け入れ始めて。

彼女の潤んだ…けれどどこか恍惚とした光を湛えた瞳で見つめられれば、俺の感覚も思考も、例えようのない甘い幸福に溶けていく。

「ん…んぁっ…く、黒崎くぅんっ…!わたし、何か…ヘン…なの…っ!」
「井上、俺…も…っ!!」

限界を知らせるかの様に、きゅうきゅうと断続的に井上の内壁が俺を締め付ける。
それに耐えきれず、俺もまた我を忘れた様に腰を打ちつける。

「…く…井上、出るっ…!」
「ひ、ひんっ…あ、ああぁっ…!!」

一気に、高みへと昇り詰めて。
井上の中で俺が弾けると同時に、井上もまた、びくんっ…と身体をしならせて声を上げた。

「…は、はぁ、はぁっ…。」

俺を受け入れる井上の花弁が、ひくひくと震えているのを感じながら、その中に全てを注ぎ込んで。
1つ、大きく深呼吸をした俺が、井上の胸にゆっくりと倒れ込めば、彼女の小さな手が俺の髪をそっと撫でた。

その小さな手は、確かに恋人のそれで…けれど、どこか母親の様でもあって。

その心地よさと、肌を重ねた快楽の余韻にうっとりしながら、やっぱり年の差なんて関係ねぇのかな…なんて思ってみる。

「井上…。」
「…なぁに…?」
「…幸せ…だな…。」
「うん…私も…幸せ…。」

顔を埋めた2つの膨らみの左側から聞こえるのは、とくとくと速いリズムを刻む井上の鼓動。

井上が、俺の腕の中で生きている。
井上が、俺と想いを通わせている。

そして、これからもきっとずっと、こうして生きていける。
そう、世界が終わるその日まで…。

…そんな幸福な予感をいつまでも噛みしめていたくて、俺は母親に甘えるガキみたいに、その後も井上の胸に顔を埋めた。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ