□恋愛課外授業
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「井上、バスタオル押さえろよ。」
「う、うん……ひゃっ!」

とりあえず、この状況を何とかするべきだ…と考えて。
身体を離した瞬間に、どうにかギリギリでバスタオルを押さえた井上の膝の下と背中に手を回し、抱き上げる。

井上が驚いた声を上げたのは、突然抱き上げられたからか…それとも、露出した肌に俺の手が触れたからか?

「く、黒崎くん!?」
「だって、ベッドがいいだろ?」

俺がそう言いながら井上の身体をベッドに下ろせば、彼女は真っ赤な顔で俺を見上げたまま、申し訳程度に身体を隠しているバスタオルをキュッと握りしめた。
そして、こういう場合、男も上ぐらい脱ぐべきか?と考えた俺がシャツを脱ぎ捨てれば、井上が再び悲鳴にも似た声を上げる。

「きゃっ…!」
「な、何だよ?」
「だ、だって、黒崎くんのハダカ…!」
「俺の上半身の裸ぐらい、プールの授業で見たことあるだろうが。」

…こんな調子で、本当に俺と井上は結ばれるんだろうか…なんて一抹の不安を覚えながら、けれど今更引くこともできなくて。
俺はベッドの上の井上にゆっくりと覆い被さった。

「あ…。」

とくり…と心臓が鳴る。

至近距離で見下ろす井上は、やけに艶っぽく見えて。
ところどころ直に触れる肌は、俺のそれとは別物のように滑らかで、柔らかで。

途端に膨らむ緊張。

精一杯余裕ぶって、不安がる井上を宥めようと胡桃色の髪を撫でるが、その手の震えが隠せない。

くそ、情けねぇっ…!

…けれど。

「黒崎くん…。」

微笑みながら俺の名を呼ぶ声も、俺の肩にそっと回った井上の手も、同じぐらい震えていることに気づいて。

ああ、俺だけじゃねぇんだ、って。
きっと井上も俺と同じ気持ちなんだ…って。
そう思ったら、何とか格好つけようと張り詰めていた心が、ふわりと軽くなった。

「…あのさ、井上。」
「うん。」
「緊張…してるだろ?」
「うん…。」
「俺もだ。初めてだし、すげぇ緊張してる。けど…さ。」
「うん…?」
「それ以上に、嬉しいんだ。」
「……!」

俺が正直な気持ちを告げれば、井上が不安げだった目を見開く。

「今…すげぇ、すげぇ嬉しいよ。…井上、は?」
「……私も…嬉しいよ…。」

ふわり…と、強がりではない笑顔を浮かべて、まだ少し潤んだ目を細める井上。
ああ…自惚れなんかじゃなく、俺と井上は通じ合えている…それを確かめるように井上を抱きしめれば、胸を満たすのは「幸福」の二文字。

「ふふ…私達、何だか1年生みたいだね。」
「1年生?」

俺の腕の中で、クスリと笑う井上にそう問えば。

「うん。春に入学してきた1年生も、こんな気持ちだったかなって。緊張して、ドキドキして、でも嬉しくて…。」
「こんな時まで仕事の話かよ。…けど、確かにそうかもな。」
「うん。だから…これからも黒崎くんと一緒に、色んなこと知っていきたいな。」
「ああ。」

そうだな。

男だから…なんて、俺が知ったかぶりして井上に「教える」んじゃなくて。
2人で一緒に「学んで」いく…そんなスタンスが、俺達にはちょうどいいのかもしれない。

「井上…。」
「ん…。」

唇を、もう一度重ねて。

俺はそのキスをスタートの合図に、いよいよ井上の身体に手を滑らせた。

「っあ…!」

ぴくんっ…と跳ねる井上の身体。
さっきのキスで濡れている唇から漏れる井上の甘い声に、ぞくり…と背中に何かが走るのを感じながら、バスタオルをずらして井上の豊かな胸に触れる。

「…んっ…!」
「すげ、でか…。しかも柔らけぇ…。」

ふに…

絶妙な柔らかさと張りとボリュームを兼ね備えた感触。
思わず素直な感想を口にしてしまった俺に、井上は困惑した表情を見せた。

「あの…大きすぎて、嫌…とか、ない?」
「は?何で。」
「だって…その、私の勘違いかもしれないけど…黒崎くん、時々私の胸を『邪魔だ』みたいに睨んでる気がして…。」
「んなわけねぇだろ、むしろ」

そこまで言いかけて、ハッとした俺は慌てて口を塞ぐ。

くそ、井上が普段跳んだり跳ねたりする度に、ぷるんっと揺れる特盛をこっそり横目で見てたの、バレてたのか(しかもそれが睨んでるように見えてたのか)…なんて頭をかきむしりたくなったけれど。

…でも、今必要なのは言い訳なんかじゃなくて、井上を安心させてやることだって解ったから。

「むしろ…?」
「その…す…好きだ…。」
「え?」
「だから、俺は好きなんだって!」
「…本当に?」

俺の「一歩間違えればただの変態」発言にも、井上は安堵の溜め息を漏らして。
そうして、井上の胸に触れる俺の手を受け入れるように、そっと自分の手を重ねた。

「…ありがとう、黒崎くん。」
「井上…。」
「私、ずっと自分の胸に自信がなかったから…嬉しいよ。あと…ね。」
「うん…?」
「こうして、黒崎くんに触ってもらうのも、嬉しいよ…。」
「……!」

今度は俺の不安を拭うかのように、はにかんだ笑顔を見せる井上。

くそ、なんだよコイツ、めちゃくちゃ可愛いじゃねぇか…!

ガラにもなく、きゅうっと甘く痛む胸。
直後、今腕の中にいる井上を何より大切にしたいという想いと、彼女の全てを力ずくでも自分のモノにしてしまいたい衝動がない交ぜになって俺の胸を締め付ける。

「…井上、もっと触れてもいいか?」
「うん…。」
「その…ぶっちゃけ俺、暴走しちまいそうだけど…でも、なるべく優しくするから。怖くなったらちゃんと言えよ。」
「うん…でも、黒崎くんが怖いことなんて、絶対にないから大丈夫だよ。」

全てを俺に委ねるかのように、瞳を閉じる井上。

それだけ、俺を信じてくれているんだ…そんな喜びと責任感を胸に。

俺は、行為を続行した。






「…っあ…ん…っ!」

俺の指の、舌の動きに反応し、シーツにしがみついて喘ぐ井上。

ああ、やっぱり本だのDVDだの妄想だの…そんなのじゃ何も「解らない」んだって、痛感する。

井上という「女」のカラダは、とても敏感で、デリケートだってこと。

井上のナカは、とても柔らかくて、しっとりと濡れていて…そして焼けるみたいに熱いこと。

井上の唇から零れる吐息は、まるで媚薬みたいに俺の理性をとろけさせてしまうこと。

全部全部、腕の中の井上が、教えてくれる。

「ん…っ!く…ろさき…くぅん…。」

俺の指で下腹部を内側から擦られ、恍惚とした顔をしている井上。

興奮する意識の片隅で、もっと彼女の全てを「解りたい」…そう、素直に思った。



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