それはまるで矢のように、
□08
1ページ/2ページ
5月の、そろそろ下旬になろうという頃のとある日のお昼。
「もうすぐ夏ですね」
「そうだねぇ、インターハイ予選も近いし、頑張らないとね!」
今日は柄にもなく自分でお昼ご飯なんてものを作ってみたので屋上庭園でそのお弁当を食べていた。
その後ぼーっと青空を見上げていたら月子先輩が屋上庭園にやって来て、なんとなく2人で話しているところだ。
「そうですね、それもありますし…先輩、高2の夏は勝負所ですね」
笑って、月子先輩に言う。
「?勝負?部活以外に何かあったっけ?」
月子先輩のそんな返事に、さすが先輩だ、と逆に感心してしまう。
「先輩は相変わらずすぎます。夏なんて恋の季節ですよ?油断してちゃダメです!」
「こ、恋の季節!?
……そ、そっかぁ…」
「先輩は、誰か気になる人とかいないんですか?」
月子先輩に聞いてみる。先輩とこんな話をちゃんとするのは、もしかしたら初めてかもしれない。
「うーん…やっぱり私、まだ人のことを好きになることがどういうことなのか、よくわからないんだよね…」
少し困ったように微笑んでそう言う先輩。
「人を好きになる、ですか」
呟いて、少し考える。
「うん…」
「…その人に会ったらどきどきしたり、目があったら嬉しかったり、共通点があったら幸せになれたりとか…
……とにかく自分を幸せな気分にしてくれる人が、好きな人なんじゃないですかね」
自分で言って、なんだか変に詩的なことを言ってしまっただろうか、と少し赤くなる。
.