それはまるで矢のように、

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6月。


先日私たちは、新入部員を迎えた。


「(…空気が重い)」

その新入部員、木ノ瀬梓くんはどうやら宮地先輩と反りが合わないらしく、そのせいで部内の雰囲気が重い日が続き、部長も胃を痛めている。

「木ノ瀬くんと宮地先輩、大丈夫ですかね…」

部活帰り、月子先輩に言う。

「うーん、心配だよね…」

「はい…」

「でもきっと大丈夫。いつか仲良くなれるよ、だから信じて待ってみよう」

「そう、ですね」

月子先輩の言う通りだ。それに、私の出る幕ではないのだろう。
そう思い、私は見守ることにした。
宮地先輩の力になれないのが悲しくもあったけれど、信じて待つことがきっと1番だろうと思った。

それからは宮地先輩との関わりも部活外ではなく、部活中は部活中で雰囲気は重く、私は少し寂しい日々を送っていた。

しかし、数日後。
ぎくしゃくとしていた木ノ瀬くんと宮地先輩の間にライバル宣言があり、久しぶりに部内が明るくなった。

その日の部活終了後、私が着替え終わり、月子先輩の元へ行くと木ノ瀬くんがいて、3人で帰ることになった。

「なんかごめんね梓くん、私が引き止めたせいで男の子1人になっちゃったね」

月子先輩が言う。

「大丈夫ですよ、僕は両手に花でむしろ嬉しいです」

「もう、梓くん…」

「…そういえば、木ノ瀬くんと喋ったことって全然なかったかも…」

私がふと呟くと、木ノ瀬くんが

「そうかもね。改めてよろしく」

と言ってくれた。

「それにしても良かったなぁ、梓くんと宮地くん、一時期はどうなることかと思った」

「心配かけてしまってすみません」

「ううん、やっと解決して良かったよ」

「宮地先輩の眉間のシワが少しは良くなるといいですね」

私が言う。

「ふふっ、そうだね」

月子先輩が笑って言って、それからは3人で他愛のない話をして帰った。



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