Tears to turn rainbow 〜涙が虹に変わるまで

□地獄への第一歩
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あれからどのくらいの時間が経ったのだろうか…

ふといつもの癖で左腕にはめている時計を見てみるが、文字盤はぐるぐると回り正確な時を知らせることはなかった。

こんなところに来てまで時間を気にするなんて。もう時間など関係ないのに…
ふっと小さく自嘲気味に笑みを浮かべて周りを見回してみる。





…何もない。






『無』の世界。




それ以上の言葉では説明出来ない、と思った。左右どころか上下さえよくわからない。



ただ一つ確信できたこと



終わった…


そう、全て終わったんだ。


僕がこれから行く道は地獄しかない。
地獄の門はここからではまだ見えないけれど、この世界のどこかにあるに違いない。
これから僕はそこをくぐらなければいけないのだから。


きっと天国へ行ったであろう母と弟と親友には会えないのが残念だが…自業自得だ。

僕が行って(おこなって)きた数々のことを思えば当然の報いだ。






その時だった。





……………




とても遠くから声が聞こえる。
何と言っているのかは聞こえない。


誰の声かは定かではない。男性なのか女性なのかさえも区別がつかないくらい遠くからの声。




なぜだかとても心地いい
…懐かしい声。


もしかして

…母さん…



もしかして僕を
迎えに来てくれの?

僕は母さんとは違うところに行かなければいけないんだ。
でも…


一目でいいから会いたい。





吸い寄せらるように僕は声の聞こえる方角へとゆっくりと歩きだした。
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