日常。
□「骸の小さな苦悩」
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「骸の小さな苦悩」
日本の空港に着いた。
人間の波に酔う。
…気持ち悪い…。
フラフラするから、父さんに掴まってないと、倒れそうだ。
輪廻の方も、母さんにしがみ付いてる。
父さんは微笑って、俺を自分の右半身に引き寄せてくる。
ねぇ、もうちょっと、甘えて寄っかかっても良い?
俺も輪廻も、人混みとか、人間が大勢居る処って、苦手なんだよね。
だって、人間が想ってる事が、全部、流れてくるから。
母さんも輪廻も微笑ってるから、きっと大丈夫。
それより、人間ってホント、救い様の無いくらい欲深いな。
耳を塞ぐ手段を持たない俺には、耐えられません。
父さんがそれに気付いて、自分の右半身にしがみ付く俺を、自分の躰に引き寄せて、右耳を塞いでくれる。
…父さんの心臓の音、優しい音だ…。
楽になる。
「大丈夫?」
「うん…」
『ふっ…』
大丈夫。
ちゃんと、歩けるよ。
世界の人間達が、俺等兄妹の悪口を言っても、父さんと母さん、母様とお祖母様、ニア兄さんに、L兄さんとB兄さん、ワイミー博士が味方なら、俺はちゃんと、歩いていけるよ。