vs.キラ

□「ラスト」
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「ラスト」


「…遅い…」
「予定通りだ」

トラックの荷台部分で隠れて居た、黒いマントのフードを被ったハイドは、俺が高田を連れて戻って来ると、不機嫌そうに一言呟いた。

「へぇ…アンタが高田清美さん?」

ハイドは科学者の様に、動物園の動物を観察する様に高田を観た。

「ニュース観てないんですか?」
「放送されてる時点で最新の情報じゃないし、嘘も紛れ込んでるから、観る必要無い」
「…」
「それに、アンタみたいな馬鹿な人間の声程、頭の痛くなるモノは無いしね」
「私はこれでも東応大学卒業者ですよ?」
「だから?馬鹿じゃん。そんな凝り固まった脳なんて。先達のコピペしか出来ない脳なんて。善悪の区別も何もかも知らないのに、解ってるふりする脳なんて…」

「人間で1番馬鹿なのは、解ってもいない事を、さも解っているかの様にひけらかす人間だよ。…アンタやキラの様な」





「殺すぞ。高田のババア」

「唯の筋弛緩剤だよ」
「…何時の間に…何処から…」
「ちょっとね…企業秘密。序でに、現在、青酸カリとか黄リンとか水銀とか有毒植物とか、普通に持ってるから」
「…お前等…本当に黄リン好きだな…」
「俺等にとっては、禁断の果実と同じ名前を持つ、その毒が1番気に入ってるだけ」
「青林檎かよ…」
「とまぁ、戯言はこの辺にして…」


「空気抜かないまま注射しても、良いんだけど?それか、針折って、心臓に刺さる様にしても良いし。どうやって殺されたい?銃殺?絞殺?刺殺?毒殺?」
「ハイド」
「…解ってるよ」


「ま、俺はアンタを殺すつもりなんて更々無いんだけどね…」


『ぷすっ…』
「あっ…」
「…別に痛くないでしょ?成人してる癖に、注射如きで五月蝿ぇな…」
「首は痛いだろ…」
「知るか。針は細いから」

「はい、車出して。早く出さねぇと捕まるよ」







「…我、我に問いて曰く、『真の愛とは何ぞ。』と。応えて曰く、『自らに対しては、他に己を捧げんとする心なり。他に対しては、他を利用せぬ心なり。』と。我、我に問いて曰く、『ならば眼前の女子は何ぞや。』と。応えて曰く、『愚か者なり。』と。…」
「…何ですか?私への皮肉ですか?」
「言わずもがな。愛が何かも理解出来てない内に、真の愛を理解する事は不可能。難関大学出てても、餓鬼に悟されりゃあ、終いだな。…尤も、テメェが騙されて利用されてんの知ってても、こっちには、何の関係も無ぇしな。まぁ、被害が出たら、殺すつもりだったし、…まぁ、結果オーライだな、うん、そう言う事にしとこう…」
「…」
「…予言してあげる。アンタはキラに、夜神月に電話を掛けるだろう。で、此処の場所を教え、助けを待つ。その間に死ぬよ?アンタが信じて疑わない夜神月がデスノートにアンタの名前を書くから。…そうだね…死因は焼死。其処のバイクのガソリンに引火して、燃える。アンタ、仏教徒?」
「ええ、一応…」
「なら、良かったね。火葬の手間が省けたね」
「薄情者」
「罪人だとしても平気で殺すアンタ等よりは、火葬する位の情は在ると想うけど?それに俺は殺し屋だからね。仕事の一環」




「アンタがデスノートの切れ端を隠し持ってる事は、最初から知ってた。筋弛緩してるから無理だと想うけど書こうとした瞬間、俺がその腕の骨を折るよ。…その前に、メロ兄さんの本名を書いても、あの人死なないよ?名前が変わったからね。序でに、アンタは“死神の眼”を持ってないから、俺の顔を観て、本名を視て、殺す事も出来ない。アンタは八方塞がり状態。…生まれ付き、“死神の眼”を持ってたら、少しは違ってたかもね…。俺等みたいに」
「…」
「筋弛緩剤打ってなかったら、アンタ今頃、麻酔無しで解剖されてるよ?」


「嗚呼、そうそう。そろそろ筋弛緩剤の効果が切れるよ。アンタがアンタ自身の手で、キラのノートに書かれた事を実行してくれないと、俺等が生き残った証拠がバレるからね」




「…色欲に塗れた女の最期…。身から出た錆だな。同情のしようも無い…」

「死ぬのはテメェだ」


「ああ、着いたみたいだね」

「兄さん、此処から出してよ。早くしないと、俺死ぬ」

「兄さん…?」

「兄さん!疲れたからって、瞳ぇ開けたまま寝るなよ!怖ぇよ!唯でさえ、瞳孔開いてて、偶に怖ぇのに!死んだと想うだろ!?」
「ん…あぁ?」
「此処から出してよ!」
「あー…嗚呼、すまない…」




「兄さん、この人体模型、運転席に置いて」
「そんな物、何に使うんだ?」
「偽装工作。序でに、本物の人骨。身元不明。戦場に転がってたの拝借した」
「…身代わりって事か?」
「そう。キラもニア兄さんも欺く。背格好も血液型もメロ兄さんと同じで、傷が少ない骨を捜すの大変だったんだから…」
「…まぁ、焼死体に銃痕が在ったら、可笑しいしな…」


「それにしても惜しいな…このバイク…」
「バイクのガソリンに引火しないと焼死として成立しないんだから、我慢しろ」
「バイク…」
「ガソリンだけ撒いたら、唯の放火だろうが…。諦めろ」
「…しょうがないか…」

「じゃあね、高田さん。ケータイは置いてくから、好きに使えば良い。此処で、救出と言う名の火葬を待っててよ。もし、次に逢ったら、利用されない様にね」
「…鬼」
「違うね。“双子の死神”だ」

「俺等…“双子の死神”に勝てる筈が無い…人間風情が…」
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