世界迷作劇場。

□「白雪姫」
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「白雪姫」

「鏡よ、鏡よ、鏡さん。世界で一番美しいのは、誰ですか?」
『それは、お妃様でございます』
「…ライバルが居ないのは、少し退屈です…」




そう言えば、昔、俺を育ててくれた魔法使いが、「困ったら、森に行きなさい。そして、七人の小人に助けを求めなさい。あ、お土産は忘れちゃ駄目よ?」、と、言っていた事を想い出した。
(一字一句間違えていない筈だ。…多分…。)

取り敢えず、森へ行こう。
総てはそれからだ。



昼でも薄暗い森の中を歩いて行くと、突然、拓けた場所に出た。
その真ん中には、小屋と言うか、家と言うか、何と言うか…まぁ、建物が有った。
小屋と言うには大きく頑丈で、家と言うには小さく家族団欒が目的ではない。

小人の住処と言えば、完全ではないが、納得出来る。

その入口であるドアを開けると、小屋(便宜上)の奥行きと同じくらいの空間が続いていた。
もしかして、この小屋は物置なのではないかと、疑ってしまったが、奥に行くと床の一部に違和感を感じた。
何なのかハッキリとは判らないが、濃い色の木と木本来の色の木で出来た市松模様の綺麗に磨かれた床の一枚だけが、輝きを失っている。
よく見れば、四隅には爪で引っ掛けた様な痕が有る。

まさか…。

『ズズッ…』
「…」

違和感を感じた一枚をずらしたら、下、地下に通じているであろう階段が現れた。



「姫に従ってりゃ、俺等は一番になれるんだからよ」
「姫じゃねぇって」

“七人の小人”(総勢30人程)と言う武装集団のボス、ロッドは、


「…人形…?」
(メロに似てんなー…)
『ちゅっ…』
「…」
『ちゅぅぅぅう…』

「うぐっ…」
「え?」

「オイ、ちょっと待てぇっ!!」
「あれ?起きちゃった」

毒林檎に含まれる青酸カリに依って起こる、チアノーゼとは違った青白さで白雪姫が飛び起きた。

「否、話の筋としてはソレで良いだろうよ…って、其処じゃねーよっ!!」
「もっと、悪戯してからにしとけば良かった…って、よく観たらメロじゃん。何、女装しちゃってんの?」
「え、や、ソレはだな…」

矢継ぎ早に話しかけてくるコイツは、俺の幼馴染みで、隣の国の王子のマット…本名、マイルだ。

「何?やっと、俺の伴侶になる気になってくれた?言ってくれれば、城まで迎えに行ったのに…水臭いなぁ、もうっ!」
「マット、お前な…人の話を聴けっ!!」
「うん、聴く聴く」

俺は台に腰掛けて、脚を組み、マットは地面に胡座をかいて、これまでの経緯を聴いていた。

「ふーん…で?そのお前の継母、今の女王を倒せば良いわけ?お姫様」
「誰が姫だ」
「メロちゃん以外居ないじゃん」


「つーか、本当に男なの?」
『ペラッ…』
『ゴッ…』
「痛っ!!」
「捲るな、覗くな、馬鹿かお前は」
「何だよ〜…女じゃない事確かめようとしただけじゃん…」




「ん…お前、俺を抱いても、子供なんか出来ねぇぞ…」
「…別に良いよ?俺はメロだけ居れば良い…」
「国はどうすんだ。王国で在る以上、世継ぎが居ねぇと、成り立たねぇだろ…」
「じゃあ、共和国とか、民主主義国とかにすれば良い」
「…」
「…メロが良い…。メロだけ居れば、今の地位も、権力も、 この国も、捨てても構わない」

「でも、今日は抱かないよ」
「何で…」
「明日になったら、解るよ」
「…」
「あの人との約束だからね…破ったら、殺されちゃう。俺、まだ死にたくないし…」
「誰…」
『ちゅっ…』
「…」
「メロ、これだけは憶えておいて。俺は、メロを信じてるし、愛してる。愛してるのは、メロだけだから」
『ぎゅっ…』
「もう遅いし、寝よ?」
「…ん…」
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