闇を切り裂け

□五年後の子供たち
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静かな朝、鳥たちのさえずりが聴こえる。

今日は、高校の入学式。高校デビューを飾る人たちにとって大事な最初の日だ。そう言ってみたが、とくに私は高校デビューをするつもりはないからあまり関係ないけど…。強いて言うなら友達がたくさん出来るよう願いたいです。

鏡の前に移動したら、真新しい制服に身を包んだ自分が映る。


(やっぱり違和感があるな…)


まだ着なれないせいで変な感じだが、何回も着てれば慣れるよね、うん。勝手に自己解決して、寝癖や変なところはないかチェックし、鞄を持ちリビングに行く。


「おや、おはよう結衣ちゃん」

「おはようおばあちゃん」


リビングに着くと、私のおばあちゃんが朝食の準備をしていた。いけない、私も手伝わないと。


「おばあちゃん、何か手伝うことない?」

「そうねぇ…じゃあ、ご飯とお味噌汁、盛って貰えるかい?」

「分かった」


バックを適当なところに置いて、ご飯とお味噌汁を盛る。あと箸も並べて置く。炊きたてのご飯の匂いとお味噌汁の香り、そして、おばあちゃんが今焼いている魚の匂い…お腹空いたなぁ…。


「結衣ちゃん、もうすぐ出来上がるからおじいさん呼んできて貰っていいかい?」


それに二つ返事し、おじいちゃんの部屋へ行く。部屋の前で立ち止まり、ドアをノックする。


「おじいちゃーん、ご飯もうすぐ出来るよー?」

「ん?おお、そうか、今から行く」


部屋の中から返事が聞こえた。リビングに戻ればおばあちゃんの作った焼き魚が出来ていた。美味しそう…。


「おじいさんは?」

「今から来るって言ってたよ」

「じゃあ、先に座って待ってるかね」


おばあちゃんが椅子に座ったので、私も椅子に座ろうかと思ったが、やってないことを思いだし仏壇の方へ向かう。仏壇の前に正座して、仏壇に飾ってある綺麗な笑顔を浮かべる女性の写真を見る。


「…おはよう、お母さん」


…そう、私の母は亡くなっているのだ。そして私は、母の両親である2人の家にいる。もう、何年も前のことだが、思い出すと辛くて悲しくなる。

仏壇を拝み、椅子に座ろうとするとおじいちゃんがやって来た。


「おはよう」

「おはようございます、おじいさん」

「おはようおじいちゃん」

朝の挨拶を交わし、おじいちゃんが椅子に座り、私も続いて座った。おじいちゃんが両手を合わせいただきますをし、私もそれに習っていただきますをした。

箸を取り、お味噌汁を飲み、焼き魚の身を一口食べ、炊きたてのホカホカのご飯を食べた。うん、美味しい。朝食のをパクパクと食べていると、おばあちゃんに話しかけられた。


「今日は入学式なのに、行けなくてごめんなさいね」

「あ、大丈夫だよおばあちゃん。用事があるんだし、仕方ないよ」

「本当に大丈夫なのか?」


今度はおじいちゃんにまで話しかけられ心配されて、それに苦笑いで返す。


「大丈夫だって!私もう高校生だよ?」


それにあまり納得していないような2人。心配してくれるのは嬉しい。でも、いつまでも2人に迷惑をかけるわけにはいかないから…。


ご飯を食べ終り、そろそろ学校へ向かう時間になった。私は鞄を持ち、2人に声をかけた。


「そろそろ学校行ってくるね」

「おお、行ってらっしゃい」

「気をつけてね、結衣ちゃん」

「うん、行ってきます!」


ドアを開けて外に出る。気合いを入れるため、自分の頬を軽く叩く。さあって、今日から頑張んないと!お母さん…ちゃんと見守っててね。


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