TAXMAN

□結果論
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しっかりしてるとか、

まとめ役だとか。



「そんな紳士だと、思ってた?」


「た、卓、お…落ち着いて、ね、っ…」



そんな幻想、

ぶち壊してあげようか。



「あ、ゃ…卓、…駄目、だ、よ…ぅあっ」



苦しそうに喘ぐ名前。


慌てる周りの声なんか、

耳に入らない。


酔った勢いか、

理性も思考も正常に機能しない。



「ちょっ、卓っ!お前、何してんだよ酔いすぎだ馬鹿!」


「はー?何言ってんだよーROY」



名前の顔にぐっと近づき

微笑みかけながら、ROYに向かって言い放つ。


名前に伸ばした手は、

動かしたまま。



「名前が可愛いからって、僻んでるのかい?イケメン君よぉ」


「んぐっ、ぁ…う、む…」


「おい、卓っ!いい加減…」



しびれを始めとする切らしたのか

ROYが俺の腕を掴み、ソファに押し倒した。



「いい加減、名前に無理矢理焼き鳥食わせんの止めろよ!さっきから、嗚咽が止まってないでしょーがっ」

「ゲホッ・・・うぅ、っは、はぁ・・・はぁ・・・」



俺の腕から離れた途端、

苦しそうに深呼吸をし始める名前。


さっきまで、きょどきょど慌てていたMARCYは名前に水を渡し

JIMは溜息を吐きながら、俺のことを見てきた。



・・・何だよ。



「もう、何だよっ!俺だってさぁ、いつもいつも・・・っ」



ぐらり、と視界が傾いて

喧騒と意識が遠退いていく。



あぁ、


また、やっちゃったな。



後悔が脳内を支配する中、

俺はそっと

目を閉じた。




 • • •




「ん…ん?」



多分、朝日のせいであろう眩しさに目を覚ますと

そこは、


何度も掃除をしに来たことのある



「ROYの家…?」



何で俺、

ROYの家にいるんだっけ?


ズキズキと痛む頭を必死に働かせ、

昨日の記憶を引っ張り出す。



あ。



一気に甦る、

昨日の記憶。



「うわ…どんな顔してROYと話せばいいんだよ」



体に纏わりつく汗が、やけに鬱陶しくて

シャワーを浴びようと立ち上がった。



ドアノブに手をかけ、

ドアを開き顔を上げる・・・と



「あ・・・え、名前?」


「おはよう、起きてたんだね卓。
頭痛くない?大丈夫?…って、あの量じゃ二日酔いは決定かぁ」



寝ぼけてるのかな、俺。


目の前に、

いつもと変わらない明るさで話しかける、名前がいるんだけど。



「昨日さー、卓が全く起きないから亮の家に連れて帰ったんだけど、私が世話係に任命されちゃって。
ちなみに亮はコンビニ行ってるんだけど、あ!何か食べたい物とかある?
っていうか…ねぇ卓、理解してる?」


「あー…ここがROYの家ってことは。うん」


「親切に説明してあげてんだから、ちゃんと聞いててよー」



少しすねた様子の名前は、また一から説明をし始めたようだけど

全然頭に入ってこない。




何で名前は、


俺に普段通り接しているんだろう。


ぐるぐると、

さっきからそんな疑問が頭を巡る。



酔っていたとはいえ、

あんな…



「だぁーかぁーらぁー、話を聞いてって言ってんだけどっ!!!!」


「いでっ!!!ちょ、待、な、痛たたっ」



しびれを切らしたのか

俺の髪の毛を掴み、上下左右に引っ張りだした。


地味に、

いや、結構痛いんですけど。



「ごめんって、き、聞く!聞くから放せよっ!!!」


「…しょうがないなぁー」



ぱっと手が離れ、開放感を感じた次の瞬間

頭を

なぜか


もしゃもしゃされた。



「え、…何してんの?」


「あははー、卓の頭もじゃもじゃー♪」


「はっ?!!人の頭勝手に触ってもじゃもじゃとか言うなよ意味分かんねぇよっ!!!」



とっさにツッコむと

名前は頭を触るのを止めた。



「卓ってさぁ、いつも周りに気配ってるじゃん」


「あぁ…そうかもなー」



急な話題転換に戸惑い、名前の方を見る。



「亮の暴走とか、まぁ止める人は必要だけど
卓だけが頑張らなくてもいいんじゃない?」



…もしかして、名前、


俺が昨日言ったこと

気にしてくれてる、とか?




‘しっかりしてるとか、まとめ役だとか

そんな紳士だと、思ってた?’





「ま、結局言いたいのは、
お酒飲んだ時に爆発しないように、ってことで」



はにかんだ様に笑い、名前は

くるり、と向きを変えた。



「じゃ、何かご飯の準備するから。
二日酔いの人には、何が良いんだろ…」


「名前、」



ぐっと手を掴み、

無抵抗の体を引き寄せる。



「別に俺、無理してる訳じゃないし、こういう立ち位置もまんざらじゃないけど」



目を丸くさせる名前を抱きしめ

自然とこぼれた笑みで呟く。



「すっげー嬉しい。ありがとう」



ちゅ、と部屋に響いたリップ音は

名前の顔を真っ赤にさせ


二日酔い気味の俺には


少し刺激の強いものだった。



「た、卓…まだ、酔ってるの?」


「はは、わかってるくせに」




シャワーなんて、


後で浴びればいっか




(卓、ここ人の家)


(…あ。)

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