TAXMAN

□ちょっと待って。
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「何、これ・・・」


「NEKOMIMI☆Fooooooo!!!」


「いや、Foooじゃないでしょ」



明らかにド○キの黄色いビニール袋から出てきたのは

白くて可愛らしい、

しかし私には
一生縁のないであろう・・・ネコ耳。



そう、萌え要素のひとつであり、
創作作品における人間に近い生き物の頭部に付いた猫の耳に似た聴覚器官のこと。

また、これに由来する猫の耳のような形をした人間の頭に付けるコスプレ道具。



・・・これを

ハイテンションで見せ付けてくるTAXMAN。



君はいったい、何にお金を使っているんだ。



「うん、卓の変な趣味にはツッコまないであげるから
酔いが醒めて恥ずかしくなる前に、早く帰りなさい」


「いやいや、今日はまだお酒は飲んでないんだぜ?」



その語尾、確実に酔ってるだろ。



「シラフのやつが、ネコ耳なんて買わないでしょーが」



帰る気のない卓にお茶でも出そうかと立ち上がれば、

腕を握られ、阻止される。



「何?」


「これさ、名前に似合うと思って買ったんだよねー」











「は?」



驚きとか何かその他色々で、

数秒思考が停止したんですけど。



え、は?


このブロッコリーは

無邪気な笑顔で何を言い出すの?



「ごめん、そのネコ耳がどうしたって?」


「だから、名前につけて欲しいなって」




いや、


学校でも、目が死んでるだの暗いだのなんだのかんだの言われ続けてきた


この私に?


ネコ耳を?


つけて欲しいですと?




「ムリムリムリムリ!え、本当にどうしたの卓ってそこまで二次元に侵されてたの?
怖っ!あぁーROY助けてー」


「この状況でROYの名前出すとか、随分余裕なんですね?」




あ、


さっきまでの笑顔がなくなった。



これは、やばい。



「ね、ネコ耳なんて現実でつけてたって
ガッカリするだけだしさ?ね?卓、卓目が怖い
よごめんってばっ!!」



「ネコってさ、ご主人様に忠誠誓わなきゃだよね?」



まるで、蛇に睨まれた蛙のように

硬直して動かない私に


ネコ耳を差し出した。



「たまには、こういうのもいいんじゃないかな?」




新しい玩具を手に入れた子供みたいな笑顔だけど、


めっちゃ可愛いし、心を奪われたけど、



言ってることとやってることは、もう変態的なレベルですからね?




「・・・似合わないから、嫌だ」


「そんなの、俺が決めるよ」



瞬きよりも早く、

卓の手が私の腕を掴み


壁に押し付ける。




後頭部に感じた軽い痛みに目を瞑ると


頭に、何か、違和感が・・・




まさか、と


冷や汗が頬を伝うのを感じた瞬間



部屋に響いた、シャッター音。

 




「やっべ・・・超可愛い」



目を開ければ、


満足そうに携帯を眺める卓の姿。



はい、

瞬きからここまで


約10秒ですよ。




「ねぇ、卓・・・それ、今、あ、まさか、ね、」



「今日からこれ、待ち受けにしよ」



「嫌ぁあああああああああああああああ」





もう最悪だ


きっと明日にはJIMに



「おはよう・・・あ、ネコ語じゃないと通じないかw」



とか言われるんだ・・・


そして内心気持ち悪いと思われるんだ・・・




「おーい、名前ー」


「放っておいて下さい・・・」


「ねぇ、こっち向いてよー」



むに、と頬を掴まれ

言われるがままに、顔を上げる。




「写真は誰にも見せないから、安心して」


「え・・・本当?」


「うん」



卓の一言に、

全身から力が抜けていく。




「だって、」



そう言い、私の首もとに手を添え

まるでネコをじゃらすように、指を動かす。



「くすぐった、い・・・ね、え・・・た、卓」



「こんな名前は、誰にも見せたくないからね

名前のご主人様は、俺だけだから」





背筋に感じた寒気は


卓の体温に包まれ、なくなった。



「へ、変態・・・」


「ま、たまには・・・ね?」






あぁ、



まんざらでもないと思ってしまうのは




結局甘えんぼな



私の性格のせいでしょうか





(本当に、ネコみたい)

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