TAXMAN
□WHAT A LONELY NIGHT
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I'll tell you my feelings, baby
I thought I'd never fall
I can not keep this feeling
Oh! No no, I want you
And I can not sleep tonight
「結構、気付くかと思ったんだけどなー…」
「卓ちゃん…」
缶ジュース片手に俺の方に手を乗せた亮は、
一度深いため息を吐いて言い放った。
「ドンマイっ☆」
「慰める気、ねぇだろ」
俺が名前と出会ったのは
高校生になった時。
既に小学生の頃から
亮、順彦、雅彦と幼なじみだった彼女と知り合って
心を奪われるのに
そう時間はかからなかった。
そして、
名前がマネージャーになるのも
暗黙の了解だったわけで。
まぁ、
本人はめちゃくちゃ驚いてたけど。
「卓ちゃん真面目だからさぁ、アピールが足りないんじゃねぇの?」
「アピールって…俺、別に亮ほどガツガツしないタイプだし」
「そっこが甘いんですよ!」
びし、と指を向け
無駄にキメ顔をする亮。
人に指、向けんなよ。
「名前への気持ちを歌詞にしたんだろ?
ならさ、もう直接言った方が早くない?」
「は、直接?」
「そう、直接」
明日のライブでさ、
言っちゃいなよ
終始笑顔の亮を見ながら
思ったこと。
こいつ、
絶対楽しんでるだろ。
* * *
泊めてだの、まだ帰りたくないだの
騒がしいやつが帰った途端
部屋の中が静まり返った。
酔った勢いとはいえ、
亮にあんな相談をしたのは
別に
名前とどうなりたいとかではなく
ただ、
ただ…
「あれ、俺どうしたいんだろ」
あの歌詞を書いてるとき
どんな気持ちだったっけ
JIMにニヤニヤされながら
名前への想いをぶつけて
曲が完成して、
それで終わり?
マネージャーとして
関わる世界が広がって
俺が知ってる幼なじみの名前じゃなくなってきて
好きにならないようにって思っても
笑顔で支えてくれる名前に
どんどん惹かれていって
そんな日々の中で
俺は歌詞にして
終わり?
疲労と酔いとで働かない頭の中
リピートされるのは
亮のキメ顔と・・・
「ま、とりあえず寝よ…」
* * *