TAXMAN
□WHAT A LONELY NIGHT
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一番前の真ん中に、名前は立っていた。
目が合い、とびきりの笑顔を向ければ
恥ずかしそうに、
はにかんだように、
笑い返してくれる。
あ、
何か…
「高校の時みたいだなっ?」
マイクに入らない程の小さな声に振り向くと、
横にいた亮が笑った。
「卓ちゃーん、ロックで大切なのはソウルだろ?ここでさ、卓ちゃんの魂、ぶつけちゃって下さいよっ!」
…そういえば、
俺にとっては
亮がいて、順彦がいて、雅彦がいて、
そして、名前がいる
そんな日常が当たり前で。
名前が客席で
誰よりも楽しんでくれるから、
俺達もステージで
全力で楽しめた。
俺達が学園祭で失敗した時は
あの笑顔に救われた。
そうだよ、
俺は
君なしじゃ、ムリ。
「WHAT A LONELY NIGHTっ!!!」
亮のシャウトが会場に響き渡り
一気に歓声が沸き上がる。
マイクの前で、
大きく息を吸った。
全力でぶつけてやるから
…覚悟してろよ?
* * *