ガラス越しの空

□2.散歩
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ー渡部壮介





涼のことを愛している。



ー昔から。

そう随分昔からだ。

俺は、まだまるで子供だった。

そして涼も同じだった。

そんな頃から、俺達は一緒にいた。




…涼の事が好きで、好きで好きで、…涼が隣にいるのが当たり前だった。

手を伸ばせばすぐにそのに涼がいた。

いつも俺が言う大して面白くもない冗談に大笑いをしていた。





今も変わらない。

涼はすぐそばにいて、笑ってくれる。




「壮ちゃん。」

涼は昔と変わらず、俺をそう呼んだ。

大人になってずっと綺麗になった涼。



長い髪を短く切って、化粧もうまくなった。



「…壮ちゃん。お願い。」

涼は真剣な顔をして言った。

切実な表情を隠さなかった。



「他にセックスフレンド…、みたいな人を探してくれない?」

涼の口から飛び出したのは、信じられない言葉だった。

「何言ってんだ?涼。」

「だから、……私の代わりに壮介とセックスしてくれる人を探してってこと。」

「そんなの必要ない。」

俺は即答する。

涼はそれを否定した。

「そんな事ない。」




俺はもうずっと、涼に触れていなかった。

「もう壮ちゃんとはセックスできない。」

ある時涼はキッパリとそう言った。その時以来だ。

それまで苦痛そうに目をつぶっている涼を何度も見ていて、それでも俺とは気がつかぬ振りをしていた。

「なんで?」

分かっていて、俺は尋ねた。

「……辛いの。」

「俺のこと嫌いになった?」

「なってない。…好きだよ。壮ちゃん。」

涼は俺の事を、俺と同じくらい愛してくれていた。




「涼…」
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