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□シンデレラコンプレックス
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@毒りんごの見分け方



「・・・も、もう良いだろッ!俺は・・・俺はあいつが憎かったんだッ・・・っ。」

「んー、でもね。いくら憎くても、恨んでも恨んでも、人を殺しちゃったらそれは立派な罪なんだよ。」

ガチャン

「え・・・と、11月20日、午後20時54分。殺人容疑であなたをタイホします。」

「・・・っ」

重く鳴り響く鉄の擦れる音。
カギをガチャリと閉める。
此の人の人生は此の音と共に終わった。
殺人なんてしなきゃ、こうはならなかったのにね。

「黄瀬君、本部に連絡しといてくれる?」

「あ、はいっス!」

事件解決っスね!と喜びの笑みを少し隠しながら言う黄瀬君に、私は、そうでもないよ、と言った。

「犯人は捕まった。・・・けど、捕まっただけで全てが解決するとは限らないでしょ?」

「そ、そうっスね・・・。」
と、口を尖らせて、胸ポケットから今最新のiPhone5だっただろうか、取り出し、連絡を取り始めた。

「・・・。」

はぁ、と溜め息をつく。
世界って本当に解らない。
殺人なんて、江戸時代にでもタイムスリップして、幾らでも切り殺せば良いではないか。
如何して、それを態々真相を追い求め、捕まえるのかと思っても仕方ない。
これが私の仕事なのだから。

「黄瀬君、残り、頼んだ。」

「・・・えっ、何スかそれ、って、・・・ちょっ・・・」

スタスタと歩いて行くと、電話に向かってスミマセンっスとか言ってワナワナしている姿が此の新入りの好きな所かも知れない。
多分こいつは誰にでも好まれ易い性格なのだろう。
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