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□シンデレラコンプレックス
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冬特有の、冷たく、体の心を冷えさせる様な風が帰り道、交差点でスゥッと手足をすり抜けた。
生憎、コートを着ているので、さほど寒くはならなかった。
時計をパット見ると、針はけっこうな時間を指していた。

「送ってくれてありがとね。ラッキーアイテムトレンチコート!」

そう言って手をヒラヒラと振った。

「っ!!どうして知っているのだよ?!」

「私も見てるからね、おは朝。」

「主任も、見てるのですね」

クイッとメガネを押し上げながら言った。
ほんとうにここでいいんですかと緑間君らしくない敬語を使って聞いてきたが、あまり自分のことについて。
・・・家のことはあまり知ってほしくないからである。

「じゃあ、またね」

そう言って青信号に変わった交差点を、さっそうと歩いて行った。



―――「・・・ただいま」

そう呟いてドアを閉める。
テツと征十郎はもう、とっくに帰ってるはずなのだが、いないようだ。
・・・まだ外食中?
まあいいか、と、軽くのびをし、重だるいまぶたをこすりながら自分の部屋へと向かった。

「澪」

「わっ、びっくりした。いるならちゃんとでてきなさいよ」

征十郎だった。

「どうして来なかった?」

「私が来ようが来ないようが、征十朗達に関係ないし、支障なんてでないでしょう?」

ふああと、あくびをし、顔も見ないで過ぎ去ろうとする私の手は征十朗によって掴まれた。

「関係ない。だが話はあった」

「今さら私に話なんて無いハズ。関係ないならほっといて」

急に掴まれた所の力が弱まっていく。
酒も入っていたせいか、一歩前へ進もうとしたとき、あしがもつれ、体勢がくずれてしまった

「っ・・・」

こけた。
そう思ったのに体は浮いている。
征十郎によってこけずにすんだのだ。
私の顔は征十朗の胸にうずめられていて、少し苦しい。

「・・・ごめん。ありがと。」

いつまでもこの体勢のままではいかないので、体を離し、そう言って私は足早に自分の部屋へと向かっていった。

「・・・。」

バタン

「っ・・・」





―――「連続殺人事件・・・ねぇ」

ズズ、とコーヒーを飲み、黄瀬からの情報を聞いた。

「しかもあれっスよ、殺された方ハンパないんスよ!」

何?と聞こうとした時、ちょうど電話がかかってきたので、後で聞くとだけ言って電話を取った。

「ったくてめーはもっとマシな言いかたねーのかよ」

「す、すいませんっス・・・」

黄瀬は、またペコリと頭を下げた。

「はい、鏡野」

『鏡野、今どこにいる?』

「部署の近くの喫茶店ですが」

『なら今から出れるな?』

「はい、いきます」

私は急いで席を立ち、コーヒー代を払って、すぐさま車へと乗った。

『今から言うからよく聞けよ』

「はい。お願いします」

カーナビをひらき、言われた通りに住所、番地を押していく。
ところでこの電話の相手は捜査一課殺人犯捜査本部田原警部からだった。
とても信頼し、頼りになる上司で、いつも助けてもらっている。



「さっそく事件っスね!」

よぉし、と気合を入れる黄瀬をまた微笑ましく思えるのは今だけだなんて知るよしもなくて。
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