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□この夜が過ぎれば
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プロローグ
最初は
ただの他人だった。
本当に
ただの。
親同士が友達で知り合うようになったため、幼かった彼と私は"友達"という関係になった。
お話ししたり、遊んだり…同じ時間を共有することが多くなったことで私達は"幼馴染み"という関係になった。
それも、周囲から"仲が良いね"と言われるまで。
考えることも
感じたことも
思ったことも
きっと一緒だったのだろう。
趣味もいつの間にか似ていて。
そんな
大分仲が煮詰まった、ある日。
ドライブの帰りだった。
私は交通事故に遭った。
驚くことに、私は無傷だった。
だけど、一緒にいた両親は死んでしまった。
冬の
寒い寒い夜だった。
その日は、なによりも
手が震えて
動かなかった。
その手に
そっと手を重ねてくれたのは
幼馴染みである彼だった。
ただ、手を重ねてくれただけなのに
涙が止まらなかった。
彼は何か言ってくれていたけど
自分の泣き声で
その声は掻き消されてしまって
結局なんだったか分からなかった。
__そして私は家も勿論無い。
そんな私を彼の家が私を引き取ってくれた…と言っても部屋だけを借りてるだけなのだが。
それでも、なんだか嬉しかった。
一人じゃない…。
だって、彼がいるのだから。
大きくなったらこの家に恩返しをしよう。
特に大きな夢もないし、私はこの家の家政婦となった。
この家全体の、かと思えば彼専属の。
まあ、この家自体凄く大きいし。
何せ幼馴染みである彼の家はお金持ちであるのだ。
そんなこんなで、
現在私は26歳である。
少し…というより大分可愛げが無くなってきている歳だろう。
年齢は?と聞かれると答えにくい。
しかも、恋愛経験はゼロ。
可能性だってこれから先ほぼゼロに近いだろう。
…まあいい。
何たって
私は一流家政婦なんだから〜ッ!
end