short story

□乙女のにおい
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それは、このたった一言で始まった。

「妃芽さんって、良い匂いしますね」

私は匂いというものを、気にしたことが無かったので、

たとえ良い匂いだと言われても


私は買ったのだ


新しい柔軟剤を。


男の子が好きな匂いはシャンプーの匂いだと聞いたから

匂いはもちろんシャンプー。


よし、早く黒子君に会って


気付いてほしいな。

はやる気持ちを堪えながら、黒子君の元へ駆けつける。


今日の風は強かったから、きっと届いてると思う。



ドキドキしながら黒子君の返事を待つ。


…良い返事じゃなきゃ、困る。


だって、こんなに、匂いごときに新しいもの買ったり、研究したりしたのも、初めてだし


でも、黒子君が出した返事は


「柔軟剤…変えたんですか?」


と、少しションボリとしているのだ。


コクリとうなずくと、

「僕は妃芽さんの匂いが一番好きなんですよ、」


と、顔色ひとつ変えずに言う


ちょっとショックだった。


せっかく、意識してみたのに、

と、今度は私がションボリすると

黒子君は、ふっと笑って


私のことをぎゅ、と抱き締めると


「こうしたら、ちゃんと妃芽さんの匂いがします。」


『ッ///』


「勝手に匂いを変えたので、お仕置きってことで、しばらく、こうさせて下さい。」


『えっ…///?!』

シャンプーのにおいと、

黒子君の微かなにおいに


少し酔いしれながら、


気づいたことがある。

黒子君の違う一面。

"まっ黒子様。"

たまには

Sな黒子君もいいかなあ、


なんて思ってる私は


乙女なのか


バカなのか。



end
 

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