short story
□それだけじゃ、わからない
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『征ちゃん♪』
ふふんと鼻歌までしている妃芽に
僕は期待してもいいのだろうか。
そう
今日はバレンタインデーだ。
__去年
『征ちゃん〜』
ドンッ
「…なんだ。」
地味に痛かった背中をさすさすとしていると
冷たいなあ、と妃芽はブツブツ言っていたが
『今日はバレンタインデーでしょ、征ちゃん♪』
「ああ。」
『…これ…///』
おずおずと差し出す妃芽の手には
可愛くラッピングされた小さい袋があった。
『自信作なんだけどね、!!!!』
袋を開けると
丸く茶色い塊が一つ。
それだけだった。
「じゃ、食べてみようか。」
一口かじってみる
「ッ……??」
歯に、食べ物ではない、固体のような硬いものがあたる。
コツン
『フフフ〜』
と笑う妃芽に少し疑惑を感じる。
何か企んでるのではないか。
恐る恐る、
かじったときにできたヒビを利用して
両手で割ってみると
中には
驚くべきものが入っていた
「し…将棋の、こま?」
『今回は征ちゃんの好きなものを入れてみたんだ〜♪なんかワクワクしたよね??』
「いや、ゾクゾクしたよ。」
『う…そうなの…』
ショボンとする妃芽に僕は微笑んでしまうのか。
「だが、斬新なアイデアだな。美味しかった、ありがとう。
次を期待している。」
そう言って頭をポンと、すると
妃芽は、ぱぁぁっと笑顔になる。
『期待してよ!次は、ほんと、腰ぬかすかもよ!』
___現在、バレンタインデー
『ふっふっふ〜♪』
俺は
期待してもいいのだろうか。
今年はあの丸く茶色い塊のなかに何が入っているのか。
反面ワクワクしてる部分もある。
「今回こそは、良いできみたいな感じだね?」
『フフフ…腰ぬかすよ?笑』
そう言って、
机に
また可愛くラッピングされた
今度はでかい袋だ。
…開けるのが恐ろしい。