short story
□彼の良いところ。
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大ちゃんと一緒にいてて疑問に思ったこと。
私の彼氏には
バスケ以外に良いところってあるんだろうか?
桜井君に聞いてみた。
「えっ!あっ!すみませんッ!!!!ありすぎて、…なさすぎてわからないですッ!すみませんッ!!!!」
どっちだよ笑
まあいいや…とにかく、
今日は気合いいれないと…!!!!
___『ねっ♪』
ふふんふふん〜♪
「随分余裕だね、簡単なの作るの?妃芽。」
ニヤリと微笑む若葉に
私は満面の笑みで、答える
『ええ、まあね?』
"若葉がいるから心強いんだよ"
そんなこと言いたかったが
言えばきっと調子にのるから喉の奥にしまいこんだ。
普通のチョコのと
ホワイトチョコで
トリュフを作るのだ。
鼻歌まで歌ってる暇はこれからは
無くなるだろう。
カチャカチャ
『ウシッ!あとはホワイトチョコの方を…』
溶かしたホワイトチョコに牛乳を一気に入れる、
ジャバ…
カチャカチャ…
「あ、そうだ妃芽、先に言うの忘れたけど、ホワイトチョコは牛乳と混ぜるとき、一気に牛乳入れるんじゃなくてちょっとずついれて、かき混ぜて、また入れて…を繰り返すんだよー」
遅いよ…若葉…。
『わ、若葉…なんか、分裂してるんだけど…』
ポールのなかを見ると
はっきりとチョコと牛乳が混ざりあってないのがわかる。
『ま、まあ、ずっと混ぜていれば、混ざるでしょ!!!!』
「分離しちゃったか…。」
『へ?分離?』
やっちゃったか、と呟くと
「どうする?妃芽。分離しちゃったら、トリュフ作れないよ?」
『ええっ!?』
牛乳を一気に入れただけなのに?!
「お菓子作りってかなり繊細なんだよ…妃芽…」
呆れた顔で見つめてくる。
もう、数足りないよ〜!!!!
だって、大ちゃんたら、去年のバレンタインの時、
__「美味しいけど…数少ねえ。」
って!
って!
言われて、ちょっとグサッときて…
「妃芽。」
あまりの落ち込み具合に
若葉は察してくれたのか、
数枚のクッキーと
ココアパウダーをもってきた。
『??』
「このクッキーを砕いて、このなかにまぜるでしょ?そしたらこの牛乳とチョコを繋いでくれると思うから…。
つないでくれたチョコを一口大に丸めて、このココアパウダーをふりかけると…」
言いながらその作業を目の前で一通りすると、
「ほら、分離トリュフ?笑」
と言って一つ完成させた。
『味は…大丈夫なのかな?』
「うん。クッキーいれてるし、それにココアパウダーも入れてるしね!」
と言ってウインクする。
『若葉ぁぁあ〜泣』
わたしゃ、あんたみたいな友がいて、ホントに良かったよ…
「さ、ぐずぐずしないで、早くしないと、夕方になっちゃうよ。」
『うん!わかった♪』
せかす若葉に私は言われた通りにその作業をした。
「青峰君、喜んでくれるといいね」
『…うん、』
「なんか返事がくらいね、なんかあったの?」
『大ちゃんて、バスケ以外に良いところあるのかな…って…。』
そう言うと若葉はあははって笑う。
『わ、笑うところじゃ…』
「そりゃ、青峰君悪いところ多そうに見えるけど…あはッ…。
きっと妃芽はまだ見つけられてないんだね。」
と優しく微笑みながら
チョコが出来上がるのを待つ。
『私が…見つけられて、ない?』
そんな、はずは無いと思った。
でも、そう言われてみれば
今まで大ちゃんの悪いところしか見てなかったのかも。
一緒にいても、すぐに寝ちゃうし…
デートしても
"ご飯おいしいね、"
って言っても、
"わかんね"
って言って欠伸するし、
私といて楽しいのかななんて、思うときもあった。
そこしか、私がみてないだけなのかな?
キッチンタイマーが
鳴り響いたので
"今日はありがとう"
"明日、頑張ってね!"
そう言って、
さっきまでの思いを心にしまい
自分の家に帰った。
__『んぁあ〜!!!!』
と背筋を伸ばしながら
帰路を歩いていると
家の前には
大ちゃんがいたのだ。
『だ、大ちゃん?!』
「よぉ」
と言って息をきらしていた。
今走ってきたのか?
私に会いに?
それともさっき作ったばかりのチョコを食べに?
なんて幼稚な考えを巡らせていたが、
まあ、こんなとこで立ち話もなんだし、と思って
『家、寄ってく?』
「…おぅ」
と返事したから
家に大ちゃんをいれた。
__『急にどうしたのさ?』
と言いながら
チョコを素早く
隠して、温かいお茶を淹れる。
返事がなかったから、振り向こうと思ったとき
ぎゅ…
『ッ?!///』
背後から抱き締められる。
「……」
お茶、危なかった…
って、今そんなこと考えてる暇ないッ!
『だ、大ちゃ…//』
「…なぁ、俺がこうして妃芽に甘えんの、嫌か?」
耳元で囁かれて、少しこそばゆい。
大ちゃんの声は少し悲しそうで、
でも、顔が見えないので
どう思ってるのか、私にはわからない。
『い、いや…悪くは…ないと…おもうけど…///』
途切れ途切れに言うと
抱き締められる力が微かに強くなる。
「妃芽…」
『な、何ッ?!//』
ドキドキしながら返事をする。
これってまさか、まさか!
「チョコの…良い匂いがする…」
ガクッ…
チョコですか、チョコですか!!!!
私はがっかりして、体を離すと
隠してた所から今日作ったチョコを渡す。
ホントは、明日渡したかったな、
なんて半泣きで渡す。
「さんきゅ♪」
と言ってにかッと笑う。
今日きたのはこのためか…
なんて思ってると
「がっかりすんなよ」
と言って顔を近づける。
「どーせ、チョコのために来たんだとか、思ってんだろーが」
『ッ…』
「何?そんなに俺に食べられてーの?」
『えっ?』
呑気な返答に大ちゃんはニヤリと笑うと
「俺の予定では、今日は妃芽の作ったやつ、
明日は妃芽って決めてたんだけど…
そんながっかりされたんなら…予定変更しよーか?」
とニヤリと微笑む。
『や、き、今日は私の作ったので…//』
なんて、なんてさらりとそんなことを言うんだ!
大ちゃんが…そんなこと考えてたなんて、
さっきまでの幼稚な考えを
今では馬鹿らしく思った。
「ばーか。」
ベチッ
『いてッ』
額に軽くデコピンされた。
痛いな。
「一番好きなんは後から食べるはなんだよ、俺は。」
と言って
分離トリュフをポイと口の中に放り込んだ。
「やっぱウメーな♪」
と笑う。
ああ、
私は今まで大ちゃんのどこを見てたんだろう?
良い所なんて
山ほどあった。
私が気付いてなかったんだ、
大ちゃんの、優しさに。
不器用だから
わかってあげられなかったのかも。
でも、
「明日は楽しみだな〜」
『うッ…///』
不器用でも、
甘えた彼も
今の私にとっては
私が大ちゃんをもっと、
好きになった
大ちゃんの良いところ。