short story

□やいて、焼いて、妬いて
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「妃芽〜俺のも作ってくれるの〜??」

「当たり前だよね、妃芽?」

二人の弟が

可愛らしい目で見つめてくるので、

『…わかったよ』


と無表情で答えると、

「そんな顔じゃ、彼氏喜ばないんじゃなーい?お姉様?」

「そうだぜ、お姉様」

『…余計なお世話!!!!てゆか、様とかやめて、なんか気持ち悪い…』

「気持ち悪いってこんなカッコイイ弟に言っていいんですかー?」

「いいんですかー?」

繰り返されるこのいつもながらなの会話に

今日だけはいつもより

腹立たしい。

『言って良いの。!!!!』


少し声をあげて、

本を見ながら作業集中に戻る。

作ろうと思ってるのは"生チョコ"だ。

これなら、弟も好きだし、


なんせ、あっ君が喜んでくれるなら。

と、少し渡したときを妄想していた。

『ふふふ…』

「魔女が毒リンゴ作ってるみたい…」


「毒リンゴ…」

んっとにもー

こいつらどうにかして、笑

一瞬でも可愛いと思った私がダメだった。

てゆうか、

魔女って…泣


__『完成♪』


明日が楽しみだあッ♪

1日早いけど、明日は一番にあっ君にあげたいから、

『光〜!柊〜!』

「そんな大きな声で呼ばなくても」

「わかるし」

この弟達は、なんと無愛想な。


『はい、これ。1日早いけど。』

どうぞ、と二人に渡すと

ニヤリと顔を見合わせて


「ありがと、ねーちゃん」

「ふふ、さんきゅ、ねーちゃん」

『う、うん…いいけど…』

何か企んでいるのか、なにやら二人は嬉しくてなのか、ニヤニヤしている。

「俺ら、ねーちゃんの幸せを日々応援するからな。」

「応援する。」

いや、応援されなくても

幸せですから。


「じゃ、おやすみ〜♪」


「おやすみ」

『うん、おやすみ…』


ま、別にいっか。


さあ、明日に備えて今日は寝るぞ〜ッ!


私はお風呂場に向かった。


あっ君絶対喜ぶね〜

うしし〜♪



__「ねーちゃん、喜ぶぞ…柊…」


「そーだな、光…」


シャワーの音と

ガサガサという音が


夜の我が家に鳴り響いた。


___『さすがだね、あッ君…』


あっ君が持っている紙袋には大量のチョコが入っていた。

隠れファンが多いのだ。

「これはね〜青ちんにあげるんだあ」

『え?そうなの?』

「やっぱり、一番食べたいのは妃芽ちんのチョコだから〜」

と言って笑う。

ああ、なんかすごい優越感…

私は鞄に入っていたチョコをあっ君に渡す。

なんか軽いけど…

ま、いいか?

あっ君は嬉しそうに袋をあける。

『妃芽ね、光と柊にもつくってあげたんだ♪だからすんごい頑張ったんだよ?』


「妃芽ちん…ひどい」


『…え?』

何が何が?!


「何も入ってないよ…」

『え?!嘘ッ?!』

あっ君が持っていた袋を取って中身を確認した…

ない!!!


ええ!?

……まさか

『光…と柊……??』

「なんか妬けるね、俺だけに作ってくれたんだと思ったのに…」

と言ってあっ君は頬を膨らませた。

あああ、どうしよう。


なにが幸せを応援するだ!

家かえったら、グーパンチだな!これは!

もぅ…

最低……

「妃芽ちん。」

『あっ』


ぐいっと体を引き寄せられる。

「でも、感謝しないとねえ」

のんびりとした声が耳に囁く。

こそばゆいような感覚が体を襲った。

『なんで??』

何が感謝なんだろう?

あっ君は体を少し離すと

私の目の前に一枚の紙切れを見せる。

その紙には

見覚えのある

下手くそな字で

"チョコは俺らが食べたが

代わりに

俺らのお姉様を

煮るなり焼くなり

お好きにどうぞ


光、柊"


『に、煮るなり…焼くなりッ///?!』

あ、あいつら何してんだあっ??!


「妃芽ちん〜」

そう言って

また、引き寄せられる


『そ、それは、また、今度にしよ…?汗 光と柊を叱りにいかなきゃ…わっ!?』

「妃芽ちん、チョコの代わりなんだから、煮るなり焼くなりするまで逃がさないよ?」

『あっ…あっ君…///?本気…?』

まぢでまぢで?!


半分嬉しいけど、


半分ちょっと、ちょっと…!!!!

「へへ…妃芽ちん顔真っ赤っか〜。」

『だ、だって!』


「心配しなくても、シないよ」


『えっ…?』


あれ、なんかショック…


「だって、ヤるだけが愛じゃないもんね、妃芽ちん。好きなものは最後までとっておく派だから〜」

『う、うん…』

ぎゅ


「ショック?俺は妃芽ちんとこうしてるのが一番好き。妃芽ちんとならお菓子なくても大丈夫だもん」

『お菓子なくても、大丈夫なの?』

そう聞くと


あっ君はクスクスと笑うと

耳に息をフッとかけて

『ひゃっ…///』


「妃芽ちんがいるからね」

そういって


耳を甘噛みした。


『あ、あっ君…///!!!!』

「かわいー妃芽ちん」


と言ってまた甘噛みする。


もう!


私はお菓子じゃないよ〜〜ッ!!!!





_やいて、妬いて、焼いて

end

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