short story
□やいて、焼いて、妬いて
1ページ/1ページ
「妃芽〜俺のも作ってくれるの〜??」
「当たり前だよね、妃芽?」
二人の弟が
可愛らしい目で見つめてくるので、
『…わかったよ』
と無表情で答えると、
「そんな顔じゃ、彼氏喜ばないんじゃなーい?お姉様?」
「そうだぜ、お姉様」
『…余計なお世話!!!!てゆか、様とかやめて、なんか気持ち悪い…』
「気持ち悪いってこんなカッコイイ弟に言っていいんですかー?」
「いいんですかー?」
繰り返されるこのいつもながらなの会話に
今日だけはいつもより
腹立たしい。
『言って良いの。!!!!』
少し声をあげて、
本を見ながら作業集中に戻る。
作ろうと思ってるのは"生チョコ"だ。
これなら、弟も好きだし、
なんせ、あっ君が喜んでくれるなら。
と、少し渡したときを妄想していた。
『ふふふ…』
「魔女が毒リンゴ作ってるみたい…」
「毒リンゴ…」
んっとにもー
こいつらどうにかして、笑
一瞬でも可愛いと思った私がダメだった。
てゆうか、
魔女って…泣
__『完成♪』
明日が楽しみだあッ♪
1日早いけど、明日は一番にあっ君にあげたいから、
『光〜!柊〜!』
「そんな大きな声で呼ばなくても」
「わかるし」
この弟達は、なんと無愛想な。
『はい、これ。1日早いけど。』
どうぞ、と二人に渡すと
ニヤリと顔を見合わせて
「ありがと、ねーちゃん」
「ふふ、さんきゅ、ねーちゃん」
『う、うん…いいけど…』
何か企んでいるのか、なにやら二人は嬉しくてなのか、ニヤニヤしている。
「俺ら、ねーちゃんの幸せを日々応援するからな。」
「応援する。」
いや、応援されなくても
幸せですから。
「じゃ、おやすみ〜♪」
「おやすみ」
『うん、おやすみ…』
ま、別にいっか。
さあ、明日に備えて今日は寝るぞ〜ッ!
私はお風呂場に向かった。
あっ君絶対喜ぶね〜
うしし〜♪
__「ねーちゃん、喜ぶぞ…柊…」
「そーだな、光…」
シャワーの音と
ガサガサという音が
夜の我が家に鳴り響いた。
___『さすがだね、あッ君…』
あっ君が持っている紙袋には大量のチョコが入っていた。
隠れファンが多いのだ。
「これはね〜青ちんにあげるんだあ」
『え?そうなの?』
「やっぱり、一番食べたいのは妃芽ちんのチョコだから〜」
と言って笑う。
ああ、なんかすごい優越感…
私は鞄に入っていたチョコをあっ君に渡す。
なんか軽いけど…
ま、いいか?
あっ君は嬉しそうに袋をあける。
『妃芽ね、光と柊にもつくってあげたんだ♪だからすんごい頑張ったんだよ?』
「妃芽ちん…ひどい」
『…え?』
何が何が?!
「何も入ってないよ…」
『え?!嘘ッ?!』
あっ君が持っていた袋を取って中身を確認した…
ない!!!
ええ!?
……まさか
『光…と柊……??』
「なんか妬けるね、俺だけに作ってくれたんだと思ったのに…」
と言ってあっ君は頬を膨らませた。
あああ、どうしよう。
なにが幸せを応援するだ!
家かえったら、グーパンチだな!これは!
もぅ…
最低……
「妃芽ちん。」
『あっ』
ぐいっと体を引き寄せられる。
「でも、感謝しないとねえ」
のんびりとした声が耳に囁く。
こそばゆいような感覚が体を襲った。
『なんで??』
何が感謝なんだろう?
あっ君は体を少し離すと
私の目の前に一枚の紙切れを見せる。
その紙には
見覚えのある
下手くそな字で
"チョコは俺らが食べたが
代わりに
俺らのお姉様を
煮るなり焼くなり
お好きにどうぞ
光、柊"
『に、煮るなり…焼くなりッ///?!』
あ、あいつら何してんだあっ??!
「妃芽ちん〜」
そう言って
また、引き寄せられる
『そ、それは、また、今度にしよ…?汗 光と柊を叱りにいかなきゃ…わっ!?』
「妃芽ちん、チョコの代わりなんだから、煮るなり焼くなりするまで逃がさないよ?」
『あっ…あっ君…///?本気…?』
まぢでまぢで?!
半分嬉しいけど、
半分ちょっと、ちょっと…!!!!
「へへ…妃芽ちん顔真っ赤っか〜。」
『だ、だって!』
「心配しなくても、シないよ」
『えっ…?』
あれ、なんかショック…
「だって、ヤるだけが愛じゃないもんね、妃芽ちん。好きなものは最後までとっておく派だから〜」
『う、うん…』
ぎゅ
「ショック?俺は妃芽ちんとこうしてるのが一番好き。妃芽ちんとならお菓子なくても大丈夫だもん」
『お菓子なくても、大丈夫なの?』
そう聞くと
あっ君はクスクスと笑うと
耳に息をフッとかけて
『ひゃっ…///』
「妃芽ちんがいるからね」
そういって
耳を甘噛みした。
『あ、あっ君…///!!!!』
「かわいー妃芽ちん」
と言ってまた甘噛みする。
もう!
私はお菓子じゃないよ〜〜ッ!!!!
_やいて、妬いて、焼いて
end