めいん
□知りたくて
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「伊月サンっ」
「お、高尾!来てたのか」
「はい、お迎えにあがりました」
ヘラッと笑う。
今日はたまたま誠凛バスケ部は休みだ。オレは知ってる。だってぇ、大好きな人のことだぜ?知ってて当たり前。
「部活休みっスよね、デート行きません?」
「知ってたのか!オレはいいけど?」
「やった!さぁ行きましょ行きましょ!」
伊月サンの手を取って引っ張る。伊月サンも嫌がっていないようでよかった。
「急にどうしたんだ?」
「いや別に。2人の休みが重なったし、会いたいなーと思って?」
理由なんてない。好きな人に会いたくなるなんておかしいことじゃないっしょ?
デートしようとは言ったものの、特別どこかに行きたかったわけでもない。とりあえず近くの公園に寄った。
「最近部活どうっスか?」
「んー、特になんと?黒子の成長が楽しみだな」
黒子………
「そうなんすか?」
「あぁ、なんか新しい技を……っとー、これ以上は言えないな」
「あー、もうちょっとで聞き出せたのに」
それが狙いか!と笑う伊月サン。可愛いなぁ……。
でもね?伊月サン。オレは別に黒子のことを聞きたかったわけじゃないんだよね。オレは、伊月サンのことが知りたいんだけど…。
「おなか、すきません?」
「そうだなー、もう5時か」
2人でマジバに行くことになった。
「黒子はな、ここのバニラシェイクが好きで、いつも飲んでるらしいんだよなー。そんなに美味しいのかな?」
と笑って言いながら、エビフィレオとバニラシェイクを頼んだ。
オレは、照り焼きにした。
「そうそう、一年から聞いたんだけど、火神はいつもチーズバーガー山のように大量に食ってんだよな。こないだのステーキハウスといい、お好み焼き屋といい、あいつの腹はどーなってんだろーな」
伊月サンはそーやって、楽しそうにオレに話しかけてくれた。でもオレは笑えない。黒子がなんだよ、火神がなんだよ。そんなのどーだっていいんすけど。オレが知りたいのは伊月サンのことで、伊月サンの全てを知りたくて。だから、学校が違う分こうやって会って、たくさん話して色々なことを知ろうとしてるのに。なんで他の奴らの名前がでてくるんだよ……。
「……かお?高尾ー?」
「っわ、伊月サン」
意識が飛んでた。
「どうした?」
「……伊月サン」
首を傾げる伊月サン。分かってないなぁ。
「伊月サン……。オレは、黒子とか火神とかは正直どうでもいいんすよ。オレが知りたいのは伊月サンのことで……。なんで他の奴らの名前がでてくるんすか?」
驚いた顔をして、沈黙が続く。
「高尾はオレのこと何でも知ってるよ。部活が休みだってことを知ってたのはびっくりしたしさ」
だから安心して?と笑う。
そうだよね、伊月サンはオレに何も隠してないっスよね……?何も分かっていないわけじゃないんスよね。
「それにさ、オレも高尾のこと知りたいよ。高尾がそういうことを思ってたってこと、知れて嬉しいよ」
この思いは、オレだけじゃなかったんだ………。オレが思うように伊月サンも思ってたのか………。ならオレは、伊月サンを少しでも不安にさせてたのかな……?
「よかったっス……!オレも、伊月サンに何も隠したりしませんから。安心してくださいね?」