めいん

□知りたくて
1ページ/2ページ

「伊月サンっ」



「お、高尾!来てたのか」



「はい、お迎えにあがりました」



ヘラッと笑う。
今日はたまたま誠凛バスケ部は休みだ。オレは知ってる。だってぇ、大好きな人のことだぜ?知ってて当たり前。



「部活休みっスよね、デート行きません?」



「知ってたのか!オレはいいけど?」



「やった!さぁ行きましょ行きましょ!」



伊月サンの手を取って引っ張る。伊月サンも嫌がっていないようでよかった。



「急にどうしたんだ?」



「いや別に。2人の休みが重なったし、会いたいなーと思って?」



理由なんてない。好きな人に会いたくなるなんておかしいことじゃないっしょ?
デートしようとは言ったものの、特別どこかに行きたかったわけでもない。とりあえず近くの公園に寄った。



「最近部活どうっスか?」



「んー、特になんと?黒子の成長が楽しみだな」



黒子………



「そうなんすか?」



「あぁ、なんか新しい技を……っとー、これ以上は言えないな」



「あー、もうちょっとで聞き出せたのに」



それが狙いか!と笑う伊月サン。可愛いなぁ……。

でもね?伊月サン。オレは別に黒子のことを聞きたかったわけじゃないんだよね。オレは、伊月サンのことが知りたいんだけど…。



「おなか、すきません?」



「そうだなー、もう5時か」



2人でマジバに行くことになった。



「黒子はな、ここのバニラシェイクが好きで、いつも飲んでるらしいんだよなー。そんなに美味しいのかな?」



と笑って言いながら、エビフィレオとバニラシェイクを頼んだ。
オレは、照り焼きにした。



「そうそう、一年から聞いたんだけど、火神はいつもチーズバーガー山のように大量に食ってんだよな。こないだのステーキハウスといい、お好み焼き屋といい、あいつの腹はどーなってんだろーな」



伊月サンはそーやって、楽しそうにオレに話しかけてくれた。でもオレは笑えない。黒子がなんだよ、火神がなんだよ。そんなのどーだっていいんすけど。オレが知りたいのは伊月サンのことで、伊月サンの全てを知りたくて。だから、学校が違う分こうやって会って、たくさん話して色々なことを知ろうとしてるのに。なんで他の奴らの名前がでてくるんだよ……。



「……かお?高尾ー?」



「っわ、伊月サン」



意識が飛んでた。



「どうした?」



「……伊月サン」



首を傾げる伊月サン。分かってないなぁ。



「伊月サン……。オレは、黒子とか火神とかは正直どうでもいいんすよ。オレが知りたいのは伊月サンのことで……。なんで他の奴らの名前がでてくるんすか?」



驚いた顔をして、沈黙が続く。



「高尾はオレのこと何でも知ってるよ。部活が休みだってことを知ってたのはびっくりしたしさ」



だから安心して?と笑う。
そうだよね、伊月サンはオレに何も隠してないっスよね……?何も分かっていないわけじゃないんスよね。



「それにさ、オレも高尾のこと知りたいよ。高尾がそういうことを思ってたってこと、知れて嬉しいよ」



この思いは、オレだけじゃなかったんだ………。オレが思うように伊月サンも思ってたのか………。ならオレは、伊月サンを少しでも不安にさせてたのかな……?



「よかったっス……!オレも、伊月サンに何も隠したりしませんから。安心してくださいね?」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ