めいん

□色々な顔
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「黒子っちー!!」




今日も、聞き慣れた声が聞こえてきた。



「なんですか?黄瀬くん」




その声の主は、中学時代一緒にバスケをしていて、彼氏である黄瀬くん。
モデルということもあり、容姿はカッコいいけど、中身は大型の犬だ。



「なんですか?じゃないっスよ〜!!わざわざ神奈川からここまで来てるんスから!」




そう、彼はなぜだか知りませんが、毎日と言っていいほど僕の学校に来るのです。
まぁ、僕は嬉しいんですけど……ってことは、彼には秘密です。




「僕に何か用ですか?」




「つれないなぁもう!!オレら、付き合ってるんスよ!?毎日会ったっていいじゃないっスか♪」




「別に僕は、毎日会うことがいいとは思っていませんが…。てゆうか人前て大きな声でそんなこと言わないでください」




仮にも僕たちは男同士です、聞いて引く人だってたくさんいます。




「いいんスよ!」




何がいいのかさっぱりわかりませんが………。




「あれ?もしかして、照れ隠しっスか?」


「違います」


「即答?!」




照れ隠しですよ、なんて誰が言いますか。






「今日はオレんちに来るっス!今家族みんな外出中なんスよ☆シャララ」




変な☆と効果音がでちゃってますけど………。




「そうてすか。いいですよ」




やった!!とわんこのような黄瀬くんは尻尾を振ってはしゃいでいる。僕の愛犬です。








「上がるっス」




「お邪魔します」




もう何度目だろうか……見慣れたその家は片付いていた。




「掃除したんですね」




「もちろんっス!こないだは部屋が汚いって帰ってっちゃったんスから!もうその日は泣きながら片付けたんスよ〜」




僕のために泣きながら掃除ですか……。
少し嬉しいです。
その片付いた家の黄瀬くんの部屋に入る。
僕が座るのはいつもテレビが正面に見えるとこ。




「ねぇねぇ黒子っち」



黄瀬くんはウキウキしながら僕に一冊の雑誌を渡した。





「これ、まだ発売されてないやつっス。特別っスよ?」




それは、来月発売予定の黄瀬くんの雑誌だった。
表紙には、いつもとはまるで別人の「モデル・黄瀬涼太」がいた。
パラパラと中を見るが、いつもの「わんこ・黄瀬涼太」はいない。
それでいい。
「モデル・黄瀬涼太」しか知らない黄瀬くんのファンは、ファンじゃない。
二つの黄瀬くんを知っている僕だけが本当の黄瀬くんのファンだ。




「これでまた、黄瀬くんの自称ファンが増えてしまいますね」





黄瀬くんは、予想外のことを言われたのか、はてなマークを浮かべている。




「もちろんカッコいいですよ?」




と言うと、いつものわんこになって尻尾振って喜んでいる。





「このことは、絶対内緒っスからね?」




「当たり前ですよ」




本当はこれは僕だけが持つべきものなんですから。





「黄瀬くん?」





1つ言っておきましょう。




「僕は、モデルの黄瀬くんも好きですが、いつもの犬みたいに尻尾振ってる黄瀬くんが大好きです。だから他のファンの子にそんな可愛い黄瀬くんは見せちゃダメですよ?」




黄瀬くんはみるみる顔を赤らめて、モデルでもわんこでもない「僕の彼氏・黄瀬涼太」だった。
色々な顔持つ彼ですが、やっぱり「僕の彼氏・黄瀬涼太」が一番好きですよ。
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