めいん
□オレの影は
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オレには相棒がいた。すんげー影が薄くて、シュートもドリブルもへったくそだけど、バスケでは一番気か合う、オレの影が。でも今そいつは、オレの近くにいない。
「テツ……」
高校に入ってからは、いつもテツの名前がでてくる。あいつ、今は別の高校で何してんだろーな。別の光を見つけて、楽しくバスケしてんのか……?憎たらしー。オレよりもいい光がいんのかよ……そんなやつどこにいんだよ……。
ただでさえ楽しくなくなったバスケだ。テツもいねぇなんてよ……。
いつもの屋上でテツのことを考えていた。
「あーいた!大ちゃん!練習でてよ!」
「…んだよ、さつきかよ」
「テツくんじゃなくて悪かったわね!でもテツくんは私のだから〜♪」
でっけー胸張って威張ってっけど、まこちゃんの方がいい胸してっから。つーかテツはオレんだ。
「ばぁか。わざわざそんなこと言いにきたのかよ」
「そんなことって!もう……。なんで練習出てくれないの?」
んなことさつきなら分かってんだろーが。返事はしなかった。さつきはため息をついて出て行った。
「青峰くん」
……!?その声は、テツか!?
「テツ!?」
そこにいたのは、ずっと待っていた、テツだった。
「なんでここに…」
「青峰くんが練習に出てくれないと、桃井さんから聞いたので」
さつきの奴………ありがとう。
「テツ……。新しい光は見つかったのか?」
「はい、次の試合にむけてしっかり練習していますよ」
そうか……見つけたのか……。
「そっか」
「青峰くんも、ちゃんと練習してくれないと困ります」
「は?!」
「次の大会ではきっとここ(桐皇)とうち(誠凛)は対決すると思います。そのとき青峰くんが本気を出してくれないと」
「テツ、それ本気で言ってんのか?」
おいテツ…何言ってんだよ。それでもかつてのオレの影かよ。オレのことなんも分かってねーのか?
「本気なんか出さなくたって勝てんだろ」
テツはしばらく黙り込む。
「………そうですね、そうかも知れません。でも」
でもなんだよ。テツ、高校に入ってそんなに変わっちまったのか?
「本気で戦わないと楽しくない。僕は青峰くんと本気で戦いたいです」
意味分かんねえよテツ…。
「でもそんな簡単に青峰くんが本気を出してくれるとは思ってません。青峰くんが本気を出して、昔みたいにバスケしてくれるように、それを僕たちのプレーで示します」
昔みたいに……か。
「僕は、昔の青峰くんのバスケが大好きです」
オレはテツを抱きしめた。
「あ、青峰く」
「言ってくれんじゃねぇか。オレを本気にさせられんだな?期待してるぜ?」
「そうできるように頑張るんです。だから青峰くんもしっかり練習してくださいね?」
「ははっ、わぁったよ。テツが言うなら」
テツは笑っていた。心の底から笑っているような気がした。信じてるぜ?テツの成長。
「もしまた青峰くんが昔のようにバスケをしてくれたら、そしたらまた一緒にバスケをしましょう。その時は同じチームとして」
「あぁ、楽しみにしてるぜ」
さっきよりも強く抱きしめた。