4バカシリーズ

□どうしようもないバカ
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『罰ゲーム』だなんて言えるわけない。
だから、愛理ちゃんの質問に答えられないのも仕方ない。
あの質問に、間髪入れず、何の違和感もなしに答えられるほど、あたしは最低な人間にはなりきれてないのだ。



「いや・・・今でも十分にさいてーだけど・・・」



家のベッドでゴロゴロしながら呟いた言葉は、自分にそのまま突き刺さった。
わかってるのにこういうことを繰り返してるんだから更にタチが悪い。

でも、あたしがこんなんになったのはアイツが原因だ。
アイツがこんなあたしにさせたんだ。



「・・・・・・寝よ」



過去の人をとやかく言ってもなにも変わらない。
やるせない気分になって、まだ夕方だけど、夜ご飯も食べてないけど寝ることにした。



―――――――――――――



『みや、別れよう』



は?なんで?



『・・・・・・みやはさ、ちゃんとみやが好きになれる人探しなよ』



待ってよ。
全然意味わかんない。



『やっぱりももじゃ無理だったみたい』



ちょっと、ちゃんと話をっ・・・!



『ずっと片想いはツラいの!』



だから!ちゃんと聞いてよ!
あたし、もものことっ・・・



『バイバイ、みや』



―――――――――――――



――ピンポーン ピンポーン



最悪な目覚めだった。
またアイツにあたしは振り回されてるのかと思うと腹が立つ。
あんな勝手な奴のことなんて考えたくもないのに夢に出てくんなバカ。



――ピンポーン ピンポーン



そして鳴り続けるインターフォン。
誰かに会う気にもなれなくて、居留守を決め込むことに。
そして時計を確認するとまだ夜の八時半で、寝てから三時間しか経ってないことがわかった。



――ピンポーン ピンポーン



相当しつこい。
誰だろ。
インターフォンを使ってるから大家さんではないはず。
うちの大家さんはすごく怖い関西弁のおばちゃんで、あたしを呼ぶ時は手でガンガンとドアを叩く人だ。



――ピンポピンポピンポピンポーン



イライラしてきたように連続でインターフォンを鳴らす訪問者。
さすがに誰だか気になってきて、いることを気づかれないようにそーっとドアに近づく。
そして誰かを確認しようとした瞬間、ドアが一度ガンっと大きな音をたてて、更に訪問者の怒ったような声が聞こえてきた。



「みや!いるんでしょ!梨沙子だから出て!!」



「うわっ、ごめんごめん!」



慌ててドアを開ける。
そこには少し怒ったような幼馴染み。



「もう!居留守とかしないでよ!」



「ごめんって」



そう言いながらずかずかと奥に入って行く梨沙子。
なにしに来たんだろうか。
お母さんになんか言われてきたのかな。



「ご飯ちゃんと食べてる?」



「え?うーん、まぁ・・・」



「今日は?」



「ううん」



「やっぱり・・・・・・おばさんが心配してた。めんどくさがって食べてないんじゃないかーって。で、様子見ついでにこれ持って行ってって頼まれたの」



そう言って差し出されたのはタッパーに入ったカレー。
そんな心配しなくても大丈夫なのに。



「また細くなってるし」



「そう?あ、梨沙子は「なに?」」



「ナンデモナイデス」



怖いよこの子。
あたしが高校に入って一人暮らしを始めてからは会う時いつも機嫌悪いし。
中学生の時は避けられてたから、それよりはいいのかもしれないけど。

小さい時はすごいなついてくれてたのになぁ。



「・・・・・・たまには帰ってあげなよ。15分しかかかんないんだから」



「うーん、気が向いたら」



そう言って笑ったあたしにため息をつく梨沙子。
いつの間にか夕食の準備は出来ていて、あんなに子供だった梨沙子も成長してるんだなぁとか思ったり。



「・・・・・・梨沙子と付き合おっかな」



だから思わずこんな言葉が出た。
だって小さい時から一緒だから考えてることわかるし、可愛いし、一緒にいて楽だし、確かに機嫌は悪かったりするけど仲悪いって訳ではないし。
まぁでも、梨沙子はどうせ呆れた顔でもしてるんだろうなって思って表情を確認する。

だけど、梨沙子は呆れた顔なんてしてなかった。



「・・・・・・帰る」



泣きそうな顔で、そう言った。
あたしは数時間前の愛理ちゃんの時のように何も言えなくて。
ドアがバタンと閉まった音でようやく立ち上がったけどそんなの当たり前に遅すぎる。
また追いかけることも出来なかった。



「なんだよ・・・それ」



あの表情には覚えがあった。
そうだ、あたしに初めて恋人が出来た時。
それを報告した時にもあんな表情をしてた。



「あたしどうすればいいんだって・・・」



後輩に更に嫌われて、幼馴染みを泣かせて。
罰ゲームなんてやめればいい。
梨沙子には冗談だと言えばいい。



だけど結局、どっち付かずなのがあたしで。



とりあえず、ただのバカなあたしでいられる友達に会いたかった。



end

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