4バカシリーズ

□バカ、バカ、バカ!
2ページ/2ページ




「いると思いました…」



屋上に足を踏み入れて、まず最初に目についた。
ヘラヘラしてないその人が。



「わかってたのに来てくれてありがとう」



少し微笑む夏焼先輩。
一週間振りに向き合った。
綺麗だな、と思った。



「もう嫌われちゃってるかもしれないけど、ちゃんとけじめつけたかったんだ」



「罰ゲームのことですか?」



自分から言ったのにその言葉に胸が痛んだ。
いや、でも、まだそうと決まったわけじゃない。
私の勘違いかもしれない。

という期待は自分を傷つけるだけだからしない。



「やっぱ、知っちゃったんだ」



困ったような顔。
覚悟していた。わかっていた。
そうとは言っても私もまだ子供で、期待するということを諦められなかったんだ。
視界が滲むのがわかった。



「どこまで知ってるのかわかんないけど、ちゃんと話す」



もういい、と叫んで逃げたかった。
でも喉が苦しくて、涙を堪えられなくて、黙ったまま立ち尽くす。



「始まりは罰ゲームだった…あの、告白した日。あそこでフラレてればこんなことになんなかった」



あそこで保留にした私が悪いとでも言うのか。
歯を食い縛る。
何がけじめをつけるだ。
責任転嫁でもしようというのか。



「でも、フラレなくてよかった」



「っ…?」



「始まりは罰ゲームだった、それは間違いない。すごく申し訳なく思ってる」



本当に苦しそうに顔を歪めて。
そうして私をまた騙そうとしてるのか。



「でも、本当に………あれ?」



覚悟を決めたような顔になって、すぐ崩れる。
なにが起こったのか。
さっきまでとはまったく違って焦ってる顔。
そして、それは更に変化して。



「えっ…あ…す、好き…?」



顔を真っ赤にして。
今気づいたような反応で。

唖然として、涙は引っ込んでしまった。



「はぁ…!?」



「え、あ、そっか…好き、になったんだ…!だから告白取り消して…あぁ…なるほど…」



なにがしたいんだこの人。
騙そうとしてる?本当に?
なにもわかってない、いや、なにもわかってなかったのは、夏焼先輩だった?



「す、好きみたい…」



そんな、ヘンテコな告白。
夏焼先輩に、あの三人の先輩に出会う前だったら怒って、いや、呆れて相手をしてなかったと思う。

でも、私はあの言葉を思い出してしまった。



『不器用ってか、色々下手くそってか……まぁ、バカなんだよ』



すんなり納得してしまった。
そして、予感していた通り、私はこの人を許してしまってる。
怒りの感情がもう沸かないのだ。
もっと怒っていい立場なんだろうけど、なんでだろうか、笑ってしまった。

一回吹き出してしまったら止まらなかった。



「あはっ…あははっ…あはははっ!」



夏焼先輩はポカーンとしてたけど、笑い声は抑えられなかった。
しばらく笑ってたら、笑いすぎたのか夏焼先輩が少し拗ねたような顔してたけど。
それを見て私はまた笑ってしまって。

そうしたら、夏焼先輩が綺麗に微笑んでこう言ったのだ。



「やっぱり、笑った方が可愛いね」



ズルいな、と思った。
でも悪い意味ではなかった。



その証拠に、私は夏焼先輩に近づくために一歩踏み出したのだ。



end
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ