全力シリーズ

□全力で愛してた
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中学三年生のあたしには、とても可愛い恋人がいる。

本当に可愛くて、それは見た目だけとかじゃなくてもう全てが可愛いのだ。



「みやっ!」



そんな可愛い後ろ姿を見つけて、あたしは声をかける。
するとみやは振り返って、少し恥ずかしげにはにかんだ。



「・・・・・・まいみ。」



・・・・・・あぁ、なんて可愛いんだろう。
確かめるような呼び方がまたグッド。

実はこの子、一個下だったりする。
すごい大人っぽくて中学生には見えないけど。



「もう帰り?一緒に帰ろうよ。」



ちょうど部活が休みだったので、遠回しにデートでもしようかと誘う。
なんか予定とかあるかな?



「良い・・・・・・あ、・・・・・・うん、いいよ。」



・・・・・・この反応、絶対なんか予定あった。
ここは年上として大人の対応をしなければ!!



「あっ、別に無理にとは言わないよ?なんか予定あるんだったら今度でもいいし。」



うん、大人の対応とは多分こんな感じだろう。



満足気にそう思っていると、みやが不満気に口を開いた。



「・・・・・・いーの、うちは舞美といたい。」



「っ・・・!!あー・・・・・・ちょっとごめん。」



いろいろ我慢できなかったあたしは、みやの腕を引っ張って物陰に連れ込む。
一応周りに人がいないのを確認したけど、少し心配なのでみやを隠すように立つあたし。

そして優しく口付ける。
しばらくそんな優しいキスを続けていると、みやが首に腕を回してきた。

そのままキスを続けるのかと思ったら、急にグイッと引き寄せられる。
そう、首に腕を回して抱きつかれてる状態。



「・・・っ・・・、はずかし・・・・・・。」



耳元でそう言われてキュンとくる。
こういうことにいつになっても慣れないみやを愛しく思った。
そして抱きついたままのみやの頭を撫でながら、あたしはニコニコと笑う。



「可愛い、みや。」



「・・・・・・うっさい。」



赤くなってる耳にキスを一つ落としてから体を離す。
やっぱり顔も真っ赤だった。



「あのーお楽しみのとこ悪いんだけど、ここ廊下なんだよね。」



後ろから声をかけられる。
知らない人かと思って慌てて謝ろうとしたら、そこには見慣れた友達の姿。



「ももっ!どうしたのこんなとこで?」



「こんなとこでってそうだよ、こんなとこなんだよ。人目も気にせずにイチャイチャしてる方がおかしい。」



なんでかわかんないけど不機嫌そうなもも。
いつもの甲高い声じゃなくて、素が混じってる低い声だ。



「あは・・・・・・ごめんね。」



苦笑しながらももに謝る。
その苦笑に苦笑してからももはみやに声をかけた。



「みーやん、顔真っ赤だけどどーしたの?」



知ってるくせに、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべてみやをからかうもも。

そんなももに更に顔を赤くして、みやは言葉を返す。



「・・・・・・っさい!!バカもも!!」



「やぁん、みーやんのツ・ン・デ・レ!」



ももの言葉は、各区切りごとにハートがつく勢いだ。



「はぁ!?違うし!!」



「そんなムキになっちゃってぇ、まだまだお子さまだねぇ。」



そんな下らない言い争いをしてる2人を黙って見てるあたし。
本当は嫉妬とかしたりするはずなんだけど、なんかヤンチャな娘を微笑ましく眺めるお父さんな気分。
・・・・・・うん、まぁそんなおかしくないよね。



「舞美っ、行こ!」



そんなことを考えてると、拗ねたようにみやが声をかけてくる。



「ん?もういいの?」



「何がっ。」



「ももとじゃれあうの。」



「っ!!じゃれあってなんかないから!!」



こんな風に些細なことでムキになるみやが可愛い。
見た目はすごい大人っぽいのに、中身はまだまだ幼いところが。



「あはは、ごめんごめん。」



笑いながら謝ってみやの手を握る。
そしてももにバイバイして、あたしたちは放課後デートへと向かった。





「どこ行く?」



校庭をゆっくり歩きながらそう聞く。
さっきまで握っていた手は、周りに人がいっぱいいるということで離された。



「んー、どこでもいーよ。」



カバンをブンブン振り回しながら歩くみや。
そんなに回してるとどっかに飛んじゃいそうだ。



「どこでもいーかぁ・・・・・・。」



じゃあどこにしようかと悩みながら歩いてると、前を歩いてたみやが止まる。



「・・・・・・ねぇ。」



「なに?」



「舞美が悩んでるうちに、うちんち着いちゃったけど。」



・・・・・・あれま。
目の前には、『夏焼』と書かれてる名字プレート。

無意識にみやについて行ってたみたいだ。



「じゃあみやんちでいい?」



これで承諾してくれれば、考える必要もないし初めてのみやの家だし嬉しいんだけど。
そう思いながらみやの返事を待ってると、慌てたように口を開くみや。



「ちょ、ちょっと待ってて!」



「え?」



「散らかってるから!」



「別に大丈夫だよ?てかあたしが片づけてあげるよ。」



あたしが笑いながらそう言うと、みやは顔を赤くさせてブンブン首をふる。



「しっ、下着・・・とか、あるから・・・!!」



だから待ってて、と赤い顔を隠しながらボソボソ言うみや。
そして家に入っていった。



「あたしは気にしないけどなぁ。」



そう呟いて、大人しくみやの帰りを待つ。
ここでみやは過ごしてるのか、と辺りを見渡してるとみやの隣の家から可愛い女の子が2人出てきた。

すごい大人びて見えるけど、2人ともどこかあどけなさが残っている。
みやより年下なのかな。



「舞美、いいよ。」



そんなことを思ってると、片付けが終わったらしいみやが呼びにきた。

お邪魔します、と言って家に入る。
するとみやが女の子2人に気付いて、あたしに先に入っててと言って外に出ていった。



「愛理っ、梨沙子っ!!」



そんなふうに2人を呼ぶみやの声を聞きながら、説明された通りみやの部屋に向かう。

みやの部屋から見える3人の姿。
2人に謝ってるようなみやの様子に、あの子達と予定があったのかなとぼんやりと思った。



まさか、今日あたしとみやが別れるなんて微塵も思ってなかった。



end

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