間違ったシリーズ(完結)

□間違った選択
1ページ/1ページ




―――ドンドン!ドンドンドンドン!!



アパート中に響くような騒音で目が覚める。
なんなんだ、この音は・・・・・・。

そう思って、まず時計を見る。
まだ午前4時。
どこの部屋の人かわかんないけど、こんな時間に騒がないでほしい。



「・・・・・・・・・寝よ。」



音が少しでも遠のくように布団を被って目を閉じた。



ドンドンドンドンドンドンドンドン!!



『・・・・・・わっ・・・!・・・やば・・・・誰・・・起き・・・・・!!』



ドアが叩かれる音に混ざって、小さく声も聞こえてくる。

本当どこの部屋なんだろ。
早く出てあげればいいのに。

そう思ってても一向に収まらない騒音。
それどころか、なんか音が近い気が・・・・・・。



・・・・・・・・・あれ?もしかしてももの部屋?



そう気づいた瞬間、ももは布団を飛び出した。
このボロいけど安い二階建てアパートを追い出されるのは辛い。


急いで、だけど静かにドアを開ける。



「誰ですか・・・?」



5cmくらいの隙間から覗くと、グイッとドアを全開にされた。

そこには茶髪でショートカットの綺麗な子。


そして、『その子』は両手を合わせて焦りながらもヘラッと笑ってももに言う。



「お願いっ!かくまって!!」



「・・・・・・・・・はっ?」



いやいやいや。
そんなドラマみたいなことって本当にある?
めっちゃ怪しいんだけど。

多分、この子じゃなかったらドアを閉めてる。



だけど。
なんか、この子は見捨てられなかったのだ。
理由なんて全くわからないけど。



「お願いします!!」



「・・・・・・どーぞ。」



ももがそう言うと、パァッと顔を輝かせてお礼を言う茶髪の子。
そして、右足を引きずって家の中に入ってきた。



「君、怪我して「しっ!」



声をかけようとしたら口を手で塞がれる。
ムッときてその子の手を外そうとしたら、ドアの外から怒鳴り声が。



『おい!!どこ行きやがった!!このクソガキがっ!!』



・・・・・・・・・どう考えてもヤクザっぽい人。
それにどう考えても『クソガキ』とはこの子のことだろう。



なんかもも、人生の選択間違えた?



そう思って例の子を見ると、息を殺して真剣な顔。
さっきまでのヘラヘラした表情とは全く違って、不覚にもドキッとしてしまった。



『ちっ!ここじゃなかったか・・・・・・!!』



外から聞こえる荒々しい声が遠ざかる。
その瞬間、一気に緊張の糸が切れた。



「あー・・・・・・危なかった・・・・・・。」



そう言ってその場にしゃがみこむ茶髪の子。
右足は庇ったままだ。

それに、良く見れば口元も切れてるし擦り傷も多い。



「大丈夫?」



少し心配になって聞いてみる。
その子はまたヘラッと笑って答えた。



「ははっ、動けそうにないやっ!」



・・・・・・・・・果たしてそれは笑って言うことなのだろうか。

呆れてため息をつく。


そして救急箱を探しに行きながらその子に質問をしてみた。



「名前は?」



「雅!友達からはみやって呼ばれてる。」



『雅』ね。
見た目に合ったハデな名前だ。



「じゃあ、みや。年いくつ?」



ももの予想では高校生くらいかなって。
顔立ちは大人っぽいけど、行動がアレだから。



「じゅー・・・・・・はち?かな?」



なんで覚えてないのよ・・・。

それにも呆れていると、みやがケンケンしながら近づいてきた。



「一応高校生。君は?」



多分、みやはもものこと年下だと思ってるんだろう。
さっきから態度が年下の子に対する感じだし。



とことん失礼な人。



やっと救急箱を戸棚の奥から引っ張り出して、みやの真ん前にガタンと音を出して置く。



「嗣永桃子。大学一年生。」



そう言い切ってからみやの腕を引っ張って乱暴に座らせる。
どうせ捻挫とかそんなとこだろう。



「いだっ!もも痛いって!!」



・・・・・・・・・年上と知ってなお呼び捨て。
ていうかあだ名。

生意気だけど、なんか憎めない。



「我慢。いきなり他人の家乗り込んできて文句言うつもり?」



「うっ・・・・・・!」



ショボンと見るからに落ち込むみや。
なんか、舞美に似てる。
大学で出来た新しい友達に。



「はい、とりあえず湿布貼って包帯捲いといたから。」



「ありがと、ございます。」



ぺこりと頭を下げられる。

その様子に少し満足。
そして切れている口元にガーゼを当てようと手を伸ばした。



けど、腕を掴まれた。



「ちょっと、何すんっ・・・・・・!!」



掴まれた腕を引っ張られて口付けられる。
いきなりのことに頭がついていかない。

フリーズしたまま動けないでいると、もっと口付けが深くなってくる。

口の中に侵入してくるみやの舌。

あたしはいつの間にか、それに応えるようにキスに夢中になっていた。

そして最後にみやがペロッと唇を舐めて離れる。



「ねぇ、しばらくここ泊めてくんない?」



甘い声で囁かれたその言葉。

あのキスからもうみやの虜になってたももが、そのお願いを断れる訳がなかった。



end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ