間違ったシリーズ(完結)

□間違った予想
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流された。
見事に流された気がする。



「・・・・・・・・・起きて、みや。」



イスに腰掛けながら寝てるみやの肩をバシバシ叩く。


昨日、あの後は一応何もなかった。
みやは怪我してるし、正気に戻ったももがみやの頬を思いっきりビンタしちゃったし。

だけど、あのキスは本当に見事に流されたと思う。

あの場も、気持ちも。

なんていうか・・・・・・巧すぎる。
相当遊んでるんだなって、すぐに思った程だ。



それにしても、『お願い』を承諾しちゃったのは、どう考えても失敗だろう。
いつまで居続けるつもりなんだか・・・・・・。



「みや、起きてってば!今日病院行くんでしょ!」



もう一度思いっきり肩を叩こうと手を振り下ろしたところを、また掴まれる。
そしてまた引っ張られる。



「おはよ、もも。」



ニコッと笑ってキスされた。
そんなみやに、ももはまたビンタをくらわせる。



―――バチン!



「いっだ!!って、痛い!」



うずくまった衝撃で足に負担がかかったらしい。
ダブルで痛んでる。

ざまぁみろ、このプレイボーイ。



「早く支度して。」



「うー・・・・・・扱いがヒドい・・・・・・。」



みやの行動が悪いんだよ。

そう言ってやりたかったけど、しょんぼりしてるみやにそんなことは言えなかった。
このみやに、ももは弱いらしい。



「・・・・・・・・・ごめんね。」



「いーよー・・・・・・。」



明らかにふてくされてる。

もも、みやのために大学休んでるんだけど。

そう思ったけど、なんか落ち込んでるみやが可愛くて。



「はい、仲直り。」



おでこに軽くキスをしてやる。
すると、みるみると機嫌が直ってくみや。



「へへっ!よし、行こっ!」



単純すぎて可愛い。
もうはしゃいでる〜ってか。

そんなこと思って甘やかしちゃってるももは、既にこのプレイボーイの罠に引っかかってる訳ね。





――――――――――――――




診断は骨折だった。
・・・・・・・・・もうちょっと丁寧に扱ってあげれば良かったかも。

そう思いながら、松葉杖をついてゆっくり歩くみやを見る。



「ねー・・・・・・ももー・・・・・・。」



文句を言いたげな顔なみや。
ついに歩くのを止めて、ももに文句を言い放つ。



「あたし怪我人!歩かせるのはヒドいと思う!」



「だってタクシー乗るお金なんてないもん。」



大学生の一人暮らしは貧乏が相場なんです。
そう心の中で反論して歩き始める。
みやは止まったままだ。



「・・・・・・・・・自転車ならアパートにあるけど。」



「マジでっ!取ってきてくれるのっ?」



文句たらったらな顔が一変。
パァッと輝く。

ここで甘やかしちゃダメなんだよね。



「・・・・・・・・・そこのベンチで待ってて。」



わかってるけど、わかってない。
みやにはなんか特殊な力があるんじゃないかってくらい、甘やかしちゃってる気がする。

今朝会ったばっかりなのに。



「はーい。」



ゆっくりとベンチに向かってるみやを横目に、ももは急いでアパートに向かった。

急げば15分くらいで着く距離だ。
今朝のヤクザっぽい人のことがちょっと心配だけど、まぁ大丈夫だろう。


そう思いながら歩くこと二分。
ケータイが鳴る。
メールだ。

特に気にしないで見てみると、そこには知らないアドレス。
不思議に思って開いたら、相手はみやだった。



『登録しといてね〜。みや』



・・・・・・・・・いつの間にもものケータイをいじったんだ。
呆れると同時に笑みが零れる。

やっぱりなんか、憎めない性格だ。



『プライバシーって言葉知ってる?』



そう送るとすぐに返信が来る。



『そりゃあ知ってるさ!』



本当、憎めない。
危機感を感じる程、ももはみやの虜になってる気がする。

その後も何通かメールをしていたら、アパートに着いた頃から急に返信がなくなった。



「・・・・・・・・・ただの気まぐれか、それともなんかあったか・・・・・・。」



自転車に跨りながら考える。
心配になって、急いでさっきのベンチまで飛ばした。





みやがいるであろうベンチには、人が二人座っていた。

みやと知らない女の子。



・・・・・・・・・心配して損した。



そう思って自転車から降りる。
自転車を引いて近づこうとしたら、みやとその女の子がキスをし始めた。



みやがそういう人だとはわかっていた。
でも、なんか、すごい嫌、かも・・・・・・。
今朝会ったばかりの人間に、どれほどのめり込んでるんだろう。
自分の気持ちを疑った。
でも、ももの心臓は正直で。



「本当ごめんね?」



「だから大丈夫だって!」



「うん・・・・・・じゃ、また・・・。」



「またね、舞。」



気づいたら二人のキスは終わっていて、女の子は帰っていった。



「あ、ももっ!」



ももに気付いたみやが笑顔で手を振ってくる。
気持ちを入れ替えて、ももはみやに近づいた。



「なにナンパしてんの。」



「え?違うよ!昨日のヤクザ、あの子のお父さんなんだ。」



自転車を止めて、女の子が座ってた場所にももも座る。
そして、みやの言葉に耳を疑った。



「はぁ?どういうこと?」



「あたしがあの子に手出したのがバレて、お父さんが怒っちゃった訳。」



いつものようにヘラヘラっと笑うみや。

だからあの子はみやに謝ってたのか。
みやが自分の父親のせいで、軽くはない怪我をしたから。



「まぁ、自業自得だよね。」



「えー、もも冷たい。」



「はいはい、早く後ろ乗って。」



胸の痛みを隠すようにみやを急かす。
こんなのまるで恋をしてるみたいだ。



・・・・・・・・・って、してるのか。


我ながら何故この恋を選んじゃったのか疑問に思う。

多分、みやのせいなんだけど。



「お腹すいたー。」



後ろでそう言うみや。
そういえばお昼ご飯はまだだった。

帰ってからすぐになんか作ってあげようと思ってるももは、それもみやを甘やかしてるっていうことだと気づいてた。



end

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