間違ったシリーズ(完結)

□間違った許可
1ページ/1ページ




みやが居候し始めてから1ヶ月がたった。

未だにみやのことはよくわからない。

みやが本当はどこに住んでるのかもわからない。
だって家はあるはずだ。
ただ家出してるとかそこらへんだと思うし。

だけど基本的にももの家に帰って来るみやは、いない時や何日か帰って来ない時も結構ある。
そういう時はどこに泊まってるのか気になった。
でも、多分ももなんかにあのプレイボーイを縛る権利はない。



みやは、それほど自由な人で。





「ただいまー・・・・・・って、いないかな?」



大学の友達と遊びに行ってたら、帰るのが23時過ぎになってしまった。
これでも途中で抜け出してきたんだけどな。

部屋の電気はついてない。
この時間だったらみやはいつも起きてるはず。



「今日はいない、か。」



気分が落ちたのがわかる。



さっさとお風呂入って寝よう。



そう思って奥の部屋に行く。

そこには、ももの布団で寝てるみやがいた。
一瞬驚いたけど、スヤスヤと眠るみやに笑みがこぼれる。



「・・・・・・・・・自分の布団で寝ればいいのに。」



みやの布団はちゃんとある。
なのに、わざわざももの布団で寝てるみやが愛おしくて堪らない。

ももは少しはだけてる布団を掛け直すためにみやに近づいた。



「・・・・・・あ。」



みやの白い首筋に、目立つ赤い痕。
胸がズキっと痛む。

それは、『みやは誰かのもの』という印なのだろうか。
それとも、誰でも・・・・・・ももでも付けられるようなものなのだろうか。



どっちにしても嬉しくないけど。



「もも・・・・・・。」



布団に手をかけたまま考えていると、みやの声が聞こえる。

起こしちゃったかな?



「みや?」



「・・・・・・ん、食べた・・・・・・。」



・・・・・・・・・寝言か。
起こしちゃった訳じゃなくてホッとするけど、起きてくれなかったことで少しガッカリ。

みやの赤い痕を隠すように布団をかけて、ももはお風呂場に向かった。





――――――――――





お風呂から出て水を飲んでると、電話が鳴る。

こんな時間に誰だろう。



「はい?」



『もしもし、もも?』



「うん。」



声の主は、さっきまで一緒に遊んでたえりかちゃんだった。
いつもみたいなのんびりした声で話し出すえりかちゃん。



『悪いんだけどさ、今からもものアパート行っていい?』



ちょっと苦笑しながらそう言ってくる。
なんだろ、急に。



「どうしたの?」



『いやぁ、ふざけて舞美にお酒飲ませたら大変なことになっちゃいまして・・・・・・。』



えりかちゃんが困ったように話してる後ろの方から、舞美の声が小さく聞こえる。
でも何言ってるかわかんなくて、確かに酔っぱらってるみたい。



「えー・・・・・・。」



いつもなら別に構わない。
だけど、今はみやがいるのだ。
騒がれて起こしちゃっても嫌だし、その・・・・・・えりかちゃんも舞美もレベル高いから、みやが手を出すかもしれない。

ももより仲良くなられたら・・・・・・と、そんな不安もある訳で。



『お願い!舞美の介抱手伝ってよぉ〜!』



えりかちゃんの必死さに、ももは折れた。
ため息をついてから条件を出す。



「はぁ・・・・・・。じゃあ絶対騒がないことが条件ね。今、例の居候が寝てるから。」



『やった!ももありがとー!後10分くらいでつくから!』



そう言って電話を切られる。
後10分くらいって・・・・・・ももが断っても来るつもりだったんじゃないか。

もう一度ため息をついて、ももはみやの寝てる部屋に向かった。



えりかちゃんにも舞美にも、みやのことは話してる。
でも、名前や容姿、その他諸々は話してない。
何言われるかわからないし、変に興味を持たれても困るし。

ただ、居候がいるってことと、その居候に恋をしてるってことだけは言ってある。


それくらいは信用している2人なのだ。



「みやがあの2人を好きにならなければ、全然問題ないんだけどね。」



あの2人がみやを好きになる可能性はほとんど無いだろう。
だって2人は付き合ってるんだから。

起きる気配がないみやの頬を撫でる。
ピクリとも動かない。
どれだけ疲れてるんだか。



「・・・・・・・・・好き、だよ。」



唇から思わず零れ落ちた想い。

みやは気付いてるのかな。


ももがこんなに本気になってることを。

みやが色んな女の子と遊んでる奴だと知ってるももが、こんなにみやのことが好きなことを。


みやの薄い唇に自分のを重ねる。
そういえば、自分からするのは初めてだったかな。
いつもはみやがふざけてするから。



少しでも、ももの想いが届けばいい。



そんな願いを込めて、みやにキスをした。








――ピンポーン



あの電話から待つことちょうど10分。
インターホンが鳴る。

急いでドアを開けてあげると、えりかちゃんに引きずられるようにして舞美がうなだれていた。



「うぅー・・・・・・えりぃ・・・・・・。」



「舞美、頑張って!もも頼んだ!!」



ももに舞美をヒョイと預けると、腰がぁ〜とか言って座り出すえりかちゃん。

・・・・・・・・・自分の恋人預けちゃっていいの?


呆れてえりかちゃんを見てみても素知らぬ顔。
ここで止まってても仕方がないので、ももは舞美を引きずるようにして部屋の中に連れて行く。



「き、きもちわる・・・・・・。」



「舞美待って、絶対に吐かないでね。」



そう言うと、素直に頷いて口を抑える舞美。
やっとのことで台所に連れて行って水を飲ませる。

少し落ち着いた舞美をいつもみやが座ってるイスに座らせて、ももは未だに玄関にいるえりかちゃんの頭を叩いた。



「いだっ!」



「自分の恋人くらい自分で面倒見てよ!」



「はは、ごめんごめん。」



ももの言葉にえりかちゃんは軽く謝って台所に向かう。
そして勝手に水を飲み始めるえりかちゃん。
そんなえりかちゃんに苦笑してからもももイスに座った。



「あ、舞美寝てる。」



「・・・・・・・・・奥の部屋に寝かしてくる。」



どんだけ自由なカップルなんだか・・・・・・。
いや、舞美は本当は礼儀正しい子なんだけど。
酔っぱらってたら話は別で。



なんか酔っ払い方はみやに似てる気がする。



たまにみやも酔って帰ってくる時があって、その時の状態が今の舞美にそっくりなのだ。
みやと舞美はところどころで似てるところがあるなぁ。


そんなことを考えながら、舞美を奥の部屋に運ぶ。

そこに敷いてあるのは、ももの布団とみやの布団。
だけど今は、みやがももの布団を使ってる。

つまり残ってるのはみやの布団だけな訳で。



「どうしよう・・・・・・。」



みやの布団・・・・・・。
いや、うん・・・別にみやは怒らないと思うけど・・・・・・。



「ももどうしたの?」



考えてると、えりかちゃんが部屋を覗いてくる。
そしてみやを見つけてはしゃぎだした。



「あ!噂の居候だ!って、毛布にくるまってて顔見えないし・・・・・。」



そう言ってみやに近づこうとするえりかちゃん。
ももは急いで舞美をみやの布団に寝かせて、えりかちゃんをリビングに連れて行った。



「騒がないって約束したよね?」



「あは・・・・・・ごめんなさい。」



ももが低い声で言うと、えりかちゃんは少し反省したらしくちゃんと謝ってくる。

しかし、やっぱりというかなんというか・・・・・・。
みやについて質問をし始めた。



「名前なんていうの?」



「・・・・・・別になんでもいいじゃん。」



「えー!名前くらい教えてよぉ!」



「や・だ。」



うるさいえりかちゃんを黙らすために、冷蔵庫にあった酎ハイを渡す。

喜んで受け取ったえりかちゃんは、そのまま飲んだくれて寝てしまった。



「本当迷惑なカップル・・・・・・。」



いや、主に迷惑なのはえりかちゃんだけどね。

自分も寝る用意をしながら呟く。
寝る用意と言っても、もうここには布団はないから毛布にくるまるだけなんだけど。



しょうがないから、明日あの親友2人にみやを紹介しよう。



そう決心しながらももは眠りについた。





次の日の朝、あんなことになるなんて考えてもみなかったんだ。



end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ