間違ったシリーズ(完結)
□間違った過去
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『――、泣かないで?――にはあたしがいるから。』
『ほんと?まいみはずっとあたしのそばにいる?』
『うん、約束。』
『へへっ!まいみ、大好き!』
温かい。
懐かしい。
これは、昔のあたしと・・・・・・。
『――、あたし恋人出来たんだ!』
『・・・・・・・・・は?』
『えりってわかるでしょ?こないだ3人で買い物した!えりに告白されて、付き合うことになったの。』
『なに、それ・・・・・・。舞美はずっとあたしの側にいてくれるんじゃなかったの・・・?』
『もちろんいるよ!今まで変わらずに――と・・・』
『やだよ・・・・・・違う・・・おかしいじゃんか、そんなの・・・・・・!あたしを・・・あたしを1人にしないでよっ・・・!!』
『――?どうしっ『舞美なんか大嫌いだ!』
『――待って!!――っ!!』
寒い。
苦しい。
これも昔の・・・・・・。
あの時、なんで追いかけてやれなかったんだろう。
追いかけてれば、今もあの子は・・・・・・。
苦しい、くるしい・・・クルシイ・・・・・・!!
「はっ・・・・・・!!」
目が覚める。
頭が痛い。
寝汗がすごい。
最悪の目覚めだ。
なんでだろう。
久しぶりにあの夢を見た。
周りを見渡してみると、以前何度か来たことのあるももの家だった。
そしてあたしの隣の布団には、毛布にくるまってて誰かわからない人が。
ももが言ってた居候の子かな。
そう思い静かに立ち上がる。
寝汗を拭いながら起こさないよう気をつけて、ももとえりがいるであろうリビングに向かった。
「おっ!舞美おはよー!」
「おはよ、えり。」
朝ご飯を食べてるえりと挨拶を交わしてからももの方を見る。
呆れてるようだったけど、いつものように笑ってくれて少し安心。
「昨日ごめんね?いっぱい迷惑かけちゃって・・・・・・。」
「慣れてるから大丈夫だよ。それより二日酔いとかない?」
呆れながらも心配してくれるもも。
冷たいように見えて、なんだかんだ優しいのだ。
「少し頭痛いかな・・・・・・。」
苦笑しながら頭を指差す。
すると、ももは待っててと言って薬箱を探しに行ってくれた。
「またももに迷惑かけちゃったねぇ。」
えりがホットミルクを飲みながら言う。
全く反省してないように見えるのはあたしだけかな・・・・・・?
そんなえりにつっこもうとしたら、あたしが寝てた部屋の襖が開く。
「ふぁあ〜・・・・・・はよ、も・・・も・・・・・・?」
目を疑った。
こんなことがあるんだろうか。
なんで・・・・・・なんで、ここにみやがいるんだろう。
「み、や・・・・・・?」
「みや・・・・・・。」
あのいつも飄々としてるえりも驚いてる。
当たり前か。
だって、みやと会うのはもう5年振りぐらいなんだから。
「・・・・・・なんで、なんであんたがいるんだよ!!」
痛いくらいに睨まれる。
あたし達には、もう昔のような温かさはなかった。
「あ、みや起きた・・・・・・・・・ってどうしたの?何この雰囲気。」
ももが薬箱を持って帰ってくる。
今の状況が飲み込めずに怪訝そうな顔。
そんなももを、みやは容赦なく睨んだ。
「んだよ・・・・・・もももグルだった訳?」
みやが自嘲気味に笑う。
違う・・・。
ももは違うんだよ、みや・・・・・・。
ももは本当にみやのことが・・・・・・。
「え?どういうこと?」
「とぼけないでよ!あたしと舞美のこと知ってて舞美を呼んだんでしょ!!」
「ちょ、意味わかんないって・・・・・・。どうしたの、みや?」
ももがみやに近づく。
だけど、みやは俯いて何も言わずにももやあたし、えりの横を通り過ぎようとした。
「みやってば!!」
そんなみやの腕をももが掴んで止める。
みやはそれを振り払った。
「うるさいな!どうせみんなあたしを裏切るんだ!!もうっ・・・誰も信じたくないっ・・・・・・!!」
みや・・・・・・あたし、裏切ってなんかない・・・。
みやと離れるつもりなんてなかったんだよ・・・。
そう思っても、なぜか口も体も全く動かない。
今まで向けられたことのなかったみやの冷たさに、あたしは凍りついてしまったみたい。
「みやに何があったかわかんないけど・・・・・・ももは裏切らないよ・・・。」
「・・・・・・なんの根拠があんの?」
「ももはっ・・・・・・みやのこと、本気で好きだから・・・・・・!!絶対に裏切らないよ・・・!!」
ももの想いに時間が止まったようだった。
それも束の間、みやがまた自嘲気味に笑う。
「ももは・・・違うと思ってたのにな・・・・・・。そんな言葉、言われ慣れたよ。」
今度こそ出て行きそうになったみやに、今まで口を開かなかったえりが動いた。
「みや。」
この場で一番冷静な声。
そんな声に、みやが止まる。
「いつまで子供のままでいるつもり?」
「・・・・・・・・・あのなぁ・・・!!」
みやが怒りを露わにした。
さっきまでは声を荒げてただけ。
怒りと言うより、混乱。
だけど今は、えりに対して本当に怒っていた。
敵意を剥き出しにして――
「黙ってろよ・・・・・・!!何を言ってもあんたはあたしの敵なんだ・・・・・・!!」
明らかに怒っていた。
―――ガチャン
扉が閉まる。
みやは、またどこかに行っちゃったみたいだ。
何も、出来なかった・・・・・・。
あの時と同じ。
追いかけることも出来ない。
「舞美、大丈夫。」
えりが頭を撫でてくれる。
それに、少し心が落ち着いた。
「みや、あたしのこと『敵』って言った。あたしがみやの敵になったのってあの時からでしょ?つまり、みやはまだ舞美のこと信じてる。」
えりの言葉に、心が震える。
みやが本当にそう思ってるかはわからない。
だけど、えりの言葉は説得力がありすぎた。
「まだ、間に合う・・・?」
「うん。で、もも。」
涙が溢れそうなあたしを抱きしめてから、えりがももに呼びかける。
ももはショックを受けているらしく動かない。
「みや、もものこと特別に思ってるんじゃないかな。そうじゃなかったらここに住み込んだりしてないと思う。まだ諦めちゃダメ。」
えりの言葉には、本当に説得力がある。
その言葉に、ももも少し落ち着きを取り戻したように思えた。
「2人とも、みやのこと知ってるの・・・・・・?」
ももが重い口を開く。
その震えてる声に、あたしは答えた。
「みやは・・・・・・矢島雅は、あたしの妹だよ。」
end