間違ったシリーズ(完結)

□間違った理解
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六歳の頃だったっけ。



朝起きたら、母親がいなくなってた。



残っていたのは少々のお金と大好きな姉。
父親はあたしが産まれる前に出て行ったとかなんとか。

訳もわかんないまま、あたしと舞美は孤児院に押し込まれてた。

頼れるのは、もちろん舞美だけだった。



『みやにはあたしがいるから。』



この言葉があったから、あたしは生きてこれたのに。

こんなあたしを愛してくれるのは舞美だけだったのに。



「・・・・・・・・・なんだそれ。あたしがまだ舞美に依存してるみたいじゃん。」



依存、してるのか・・・・・・。



『舞美なんか大嫌いだ!』



これは中1の時だったはず。



あの時に戻れたら。



何回願っただろうか。
どれだけ願ったって、戻れる訳ないのに。

どう考えても子供だった自分。
次に舞美と会ったら、謝ろうと思ってた。
一言目に謝って、二言目に大好きだって伝えようと思ってたんだ。



でも、出来なかった。
あたしはあの頃と全く変わってなかった。

舞美に嫌われてるかもしれない。
そう思ったらもう、発狂するしかなかった。
舞美に、あたしの持ちうる全ての冷たさをぶつけた。
ももは関係ないはずなのに八つ当たりして。
更にえりかちゃんに逆ギレ。



退化してんじゃないか、あたし。



あぁ、そんで。
昔の話の続き。

舞美から離れて気づいたことがある。



ちょっと『おねだり』すれば、大抵の女の子は言うことを訊いてくれるってこと。



それからすぐに『好き』って言ってくる。
あたしが色んな女の子と遊んでるの知ってるくせに、『自分は本気だ』って。
みんなそれ言うのにね。

もちろんそんな言葉信じられる訳なかった。
あたしを愛してくれる人なんていないんだから。



でも、ももは違った。
いつものように『おねだり』したのに、あたしに好きって言わなかった。
あたしを好きにならなかった。



特殊だった。



・・・・・・はずだったんだけど。



「結局みんな同じってゆー・・・・・・。」



只今、公園のベンチ。
無一文な上に薄着。

そりゃ寝てた格好のまま飛び出してきたんだからしょうがない。



「さむ・・・。」



女の子が通りかかれば声かけるんだけど、あいにく今は平日の午前中。
都合良く通りかかるはずはない、か。



「可愛い子通りかかんないかなぁ・・・・・・。」



そんなことを呟いてると、前から人が歩いてくる気配。

これはラッキー。



「みーやびっ!」



げっ・・・・・・。

確かに可愛い女の子は望んでた。
だけど、よりによってこの人が来なくても・・・。



「何してんですか、亀井さん・・・・・・。」



あたしの前に立っていた亀井さんは、あたしの横に座る。
そして、にへーっと笑って口を開いた。



「いやぁ、雅が可愛い女の子呼んでたから絵里のことかなぁって。」



「とんだ勘違いです。」



確かに可愛いけど。

亀井さんもまた、特殊だった。
なんていうか・・・・・・逆らえない?
あたしの言うことを聞いてくれないし、自分のしたいようにするし。
そういうのは苦手だったから離れようとしたのに追いかけてくるし。

どうもこの人には勝てないっぽい。



「そーゆーこと言っていいの?」



急に声をひそめる亀井さん。
あたしの首元に手を伸ばして、赤い痕に触れる。



「ちょっ・・・!」



「また、いじめるよ?」



妖艶な笑み。
この人本当に二重人格なんじゃないかな・・・。
普段の無邪気な時との差が激しすぎるでしょ。



「・・・・・・やめてください。てかこんなはっきり付けないでくださいよ・・・・・・。」



文句を言いながら、亀井さんの手をやんわりと押し返す。

痕をつけていいなんて言ってない。
ていうかあたしがするつもりだったのに、無理矢理されたし。

そういうのは苦手なんだってば。



「えー・・・・・・だって雅、誰のものにもならないから絵里が貰っちゃおうと思ったんだもん。」



何言ってるんだこの人は。
あたしなんて貰ってもなんにもならない。



結局、みんなあたしを捨てるんだ。



「・・・・・・雅ってさぁ、自分のこと理解してないよね。」



なぜか、いきなりそんなことを呆れたように言われる。

なんでだろう。
一応理解してるはず。
昔と変わらないただのガキ、そんなのわかったんだ。



「被害妄想とも言うのかなぁ。」



そう言って、あたしの頭をポンッと叩く。
そのまま優しく撫で始めて、優しい目であたしを見た。



「雅はみんなに愛されてるよ。」



その言葉に、あたしの頭は真っ白になった。

だってその言葉は、あたしの今までの考えを全否定するもので。



本当にそうだった場合、あたしはどれだけの人にどれだけの酷いことをしたんだろう。



「・・・・・・・・・んな、そんな訳ないじゃないですか。」



そんな言葉を残して、あたしはその場を去った。

亀井さんは動かない。

まるで、あたしが自分から変わるのを待ってるみたいに。



あたしは、行く宛もなくさまよった。



end

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