間違ったシリーズ(完結)

□間違っていたあの頃
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矢島雅。
みや。

舞美の妹。

どうしようもなく子供で、どうしようもない不器用。

あの子が思ってることなんて気づいてた。
ただ、異常な程の姉妹愛を目の当たりにして怖かったんだ。



舞美は一生あたしのものにはならないんじゃないか、と感じてしまったから。



それくらい2人は依存し合っていた。
それは今も同じはず。
なのに不器用なあの子のせいで、その関係は未だに戻らない。

それだと困るんだ。
いつまでも舞美が傷ついたままだったら意味がないから。



だから、あたしは。
あたしが壊してしまった、2人の関係を。
今から修復しに行くんだ。





とある土手に寝転んでいるみやの隣に座る。
目を瞑ってるからあたしが来たことに気づいてないみたい。

一つ深呼吸をして、あたしはみやに声をかけた。



「みや。」



「うわっ・・・!・・・・・・え、なんで?なんでここにいんの知ってんの?」



結構驚かれた。
でも、なんかいつもと違う?
怒ってないし。
機嫌は良くなさそうだけど。

・・・・・・・・・ていうか、なんかやつれてるように見えるんだけど。



「目撃情報が入ったからね。・・・・・・・・・大丈夫?」



「誰から?3日間なんも食べてない。」



淡々と話すみや。
ももの部屋から出て行った時からなんも食べてないってことか。
確かに財布は持っていかなかったらしいけど、携帯は持ってるはず。
みやを養ってくれる女の子なんていっぱいいるのになんでだろう。

まぁ、とりあえず会話を進めようか。



「亀井さんから。」



「・・・・・・・・・は?」



「知ってるでしょ?」



みやは目を見開いて驚いている。
本当綺麗な顔してるなぁ。



「そりゃ知ってるけど・・・・・・。」



「あたしが中学生の時から仲良いんだ。だから、あたしはみやのこと前から聞いてた。」



「へぇ・・・・・・世界ってせま・・・・・・。」



そう言って微笑むみや。
なんか雰囲気が柔らかく感じるのは、やつれてるから?

・・・・・・・・・違うか。
これなら、すぐ舞美に会わせても大丈夫そうだ。
何があったか知らないけど、亀井さんがなんか言ってくれたのかな。

手間が省けた。
変わってなかったらあたしが言うつもりだったから。



「あのさ、舞美に言いたいことあるんでしょ?」



その質問に、みやが生唾を飲み込んだ音が聞こえる。
図星だよね。



「会わなくていいの?」



眉間に皺がよってるみや。
ちょっと怒ってきたのかなと思ったけど違うみたい。

だって、今はなんか泣きそうだもん。

本当の子供みたいに。



「会いたいよ・・・・・・でも、あたし舞美にひどいこと言っちゃったから・・・・・・。」



それってもしかして、あの別れる時に言った『大嫌い』のこと?
そんな昔のことまだ気にしてたんだ。
・・・・・・・・・あぁ、でもそれは舞美もか。



「本当は違うんでしょ?それとも本当に『大嫌い』なの?」



「っんな訳ないじゃん!!大好きだよ!・・・・・・・・・ずっと、あたしには舞美しか・・・・・・。」



勢いよく起き上がったみやだけど、多分空腹のせいでまたへなへなしてる。

ていうかあたし相手だと、こんなに素直に言いたいこと言えるんだね。
なんでそれを舞美に言ってやらないのか。
それに、まだ勘違いしたまんまだし。

ちょっとムカつく。



「あのさぁ、本当にみやには舞美しかいないの?今まで付き合ってきた子達は?みやに好きって言ってきた子達は?・・・・・・・・・ももは?」



「・・・・・・・・・。」



「もうわかってるんでしょ?みんな本当にみやのこと好きなんだって。その人達に対して、今まで自分がどんなに酷いことしてきたかって。それを償うにはさ、早く舞美と仲直りして、本当に好きな人見つけて、その人と幸せになるしかないんじゃない?」



みやは黙ったままだ。

だけど、多分もう大丈夫なんじゃないかな。

舞美に会わせても。



「もしもし。来ていいよ。」



携帯電話を取り出して、繋がったままだった電話にそう言う。
そう、実はずっと繋がってました。



「・・・・・・はっ?え?なに?」



ははっ、驚いている驚いている。
ここであたしが説明しなくても、今から来るあの人に会えば自然とわかるだろう。



「みやっ!!」



はい、登場。
ていうか早いんだけど。
確かに近いところに待機させてたけどさ。
さては走ってきたな。



「まい・・・み・・・・・・?」



あたしに一瞥もくれずにみやを抱きしめる舞美。
そんなに早く行動してたらみやが状況を飲み込めないぞ。

・・・・・・・・・それにしても梅さん寂しいわ。



「みや・・・・・・ごめんね、一人にして・・・・・・。みやを置いてくつもりはなかったんだよ・・・・・・。」



「・・・・・・・・・・・・舞美は悪くない。あたしが勝手に勘違いして・・・・・・本当にガキだったんだ。」



「違う・・・違うよ・・・・・・。でも、それよりも・・・・・・これからはずっとずっと一緒にいたい・・・・・・。」



「あたしも・・・・・・一緒にいたい・・・・・・。あの時、傷つけちゃってごめん。本当は大好きだよ。嫌いだなんて思ったことない。」



「・・・・・・っ、うー・・・あたしもっ・・・・・・好きぃ・・・!」



・・・・・・・・・え、これ告白ですか?

恋人とその妹の告白シーンを見ることになるとは。
ていうかいくらなんでもラブラブすぎでしょ。

・・・・・・・・・うん、これが怖かったんだよね。

本当にこの人達、お互いのこと好きすぎて。



「それにしてもさ、あたしのこと忘れすぎじゃない?」



その言葉にみやは慌てて舞美から離れようとするけど、いかんせん舞美が離さない。
そんな舞美にみやは呆れたように笑って、髪にキスをしてから囁いた。



「今はえりかちゃんの話聞こ?これからはずっと一緒にいられるんだし。」



・・・・・・・・・おいおいおいおい。
なんだか本当のカップルにしか見えないんですけど。
え、姉妹だよね?
血繋がった姉妹だよね?



「・・・・・・・・・うん。えり、どーぞ。」



しぶしぶみやから離れる舞美。

えー・・・・・・なんか、これからが不安になってきたんだけど・・・・・・。



「じゃ、じゃあ・・・・・・次のスペシャルゲストをお呼びしまーす・・・・・・。」



これは舞美も知らない。
あたしとあの子だけの打ち合わせだったから。



「・・・・・・・・・もも・・・!」



みやの驚いてる声。

ていうか、なんでみんなそんなに登場するの早いの?
実はあたしが一番驚いてると思うんだけど。



「みや・・・・・・。」



「・・・・・・・・・・・・ごめんなさい。いっぱい面倒みてもらったのに、勝手に勘違いして飛び出して。」



みやはゆっくりと立ち上がってぺこりと頭を下げる。
そんなみやに近づいて、ももはみやに微笑んだ。



「ももは怒ってないよ。」



その言葉におずおずと頭を上げたみやを、ももは優しく抱きしめる。
それにちょっとムッとした舞美を見て、あたしはちょっとムッとしたんだけど。

やっぱりあたしは、みんなにこれだけ愛されてるみやが羨ましいよ。



「ももの家に帰っておいで?あそこはもう、みやの家でもあるんだから。」



「・・・・・・うん、ありがと。」



そう言って微笑んだみやは、昔よりずっといい顔をしてた。

その表情に少し惹かれたのは、あたしだけの秘密。



end

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