2人シリーズ(完結)

□不安な1人といじける1人
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「パーティー行きたい。」



あたしが料理を作ってる横で、みやがもう五回目くらいになる言葉を言う。

きっかけは、昨日の買い物の時のちぃ。

だけど、あたしとしては行かせたくない。



「だからダメだって。」



「なんでよー・・・・・・。」



適当にそう言うと、またみやが拗ねる。
あたしのエプロンの端を掴んで引っ張ったりしてる。

一年ちょっと前、出逢ったばかりの頃は感情がほとんど無かったみや。
そんなみやがここまで興味を示してるなら、行かせてあげるべきかもしれない。



でも、どうしても行かせたくない。
不安なのだ。
出逢ったばかりの頃の、不安定なみやを今でも思い出すから。

ずっと抱きしめてないと消えちゃいそうなみやを。



「舞美ー、お願いー・・・・・・。」



あたしを見上げてくるみや。

この目には弱いんだけどな・・・・・・。

そう思って少し考えてると、インターフォンが鳴った。



「あ、行ってくるね。」



拗ねてるみやをおいて玄関に向かう。
郵便物とかだろう。

ハンコを用意して、あたしはドアを開けた。



「はーい。」



「よっ!」



・・・・・・・・・・・・ちぃ。
今、みやがゴネてる原因。

そんなちぃが、いつものようにニコニコしながらやってきた。



「いらっしゃい。どうしたの?」



とりあえず、ちぃを中に招き入れながら話を聞いてみる。
だけどちぃはキョロキョロしてて答えない。



「えっとね、みやは?」



やっと答えたと思ったらそれ・・・・・・。
呆れながらリビングに入ると、テレビの部屋でソファーに体育座りをしていじけてるみやの背中が。

それを指差して、口を開く。



「そこでいじけてる。」



「あははっ!みやー、うちが来たよー。」



笑いながらみやに近づくちぃ。

みやのことはちぃに任せるか。
そう思ってあたしは、夜ご飯の準備を再開した。



「本当!?」



「しーっ!しーっ!」



再開したと同時に聞こえたみやの嬉しそうな声とちぃの焦った声に、なんか少し嫌な予感が。
訝しげにそっちを見れば、愛想笑いをしてこっちを見るちぃ。

更に怪しい・・・・・・。

しかも、そんなちぃにみやはぴったりとくっついてるし。



「ちぃ、みやに変なこと教えないでね。」



とりあえず一声かけて、夜ご飯を作ることに専念した。

それから10分後くらい、もうそろそろご飯ができるってところで、内緒話をするみたいにコソコソしてた2人が声をあげる。



「わかった!」



「よし!じゃあそれで!」



テンションが上がってる2人に、やっぱり不安に思う。

だって、ふてくされていたみやがあんなに楽しそうにしてるから。
みやの保護者として、何を話してたのかを聞かないと。



「ご飯出来たよー。」



机にお皿を並べ終えてから2人を呼ぶ。
ちぃが来たので、ちゃんと三人分作った。
それぞれ決められた席について、三人一緒にいただきますをして食べ始める。



「うまっ!舞美また料理うまくなったね!」



「ありがと。あのさ、さっきみやと何話してたの?」



叫ぶちぃに少し笑ってから、怪しまれないように自然に聞いてみたつもり。
・・・・・・・・・実際はちょっと焦りすぎたけど。



「へっ?い、いやっ、別に変なこと教えてた訳じゃないよっ?」



あからさまにおかしいちぃ。
これはもうちょっと突っ込んでみないと。



「学校の話聞いてただけ。あたし学校行ってないからどういうとこかわかんないし。」



みやが代わりに答える。
その話し方は少しトゲトゲしくて、あたしにはまだ怒ってるらしい。
いつも話しながら食べるのに、黙々と食事を進めてるし。

・・・・・・・・・寂しい。



「そっか・・・。」



だから、引き下がってしまった。
もっとちゃんと聞いておけば、みやがちぃと一緒にパーティーに行くだろうってことくらい予想がついたのに。

あたしのみやへの愛情が裏目に出たのだった。



end

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