4バカシリーズ

□バカ、知られた
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一日中、ボーッとしてた気がする。



―――――



わかってる。
自惚れてた自分が悪い。
でも、よく考えてみたら夏焼先輩の行動はおかしいと思う。
冷静に、冷静に考えてみると。



「あそこで告白を取り消す意味は…」



最初から好きじゃなかった?
あんな真剣に、真面目な告白してきたのに?
私も疑ったけど、最終的に信じたのに?
それとも、好きじゃなくなった?
いきなり?結構良い感じだったのに?



「わっかんないよ…」



机にうつ伏せる。
ひんやりしてるのが気持ち良くてしばらくそのままでいる。
ホームルームが終わって一時間近く経ってる教室に誰もいないことは確認済みだ。



――ガラッ



「あれ…」



遠慮なしにドアが開けられた音。
そして、その後に続いた声に、心臓が大きく跳ねた。
顔をあげるタイミングを完全に逃してしまった。
そんな後悔してるうちにも足音はだんだん私の方に近づいてきている。



「…寝てるの?」



わざわざ耳元で。
囁くように。
顔に熱が集まっていく。



「ごめんね」



そう残して、夏焼先輩は教室を出ていった。
私の顔に集まった熱はどこにも行ってくれてないというのに。

でも。



「どういうこと…?」



そう呟きながら顔をあげる。
なんで謝ったんだろう。
夏焼先輩は、謝るようなことを私にした?
それとも告白を取り消したことに関して?



「…帰ろっかな」



開けっ放しになっているドアを見ながらそう言う。
ここにいてもなんにもならない。
帰ろう、と立ち上がった時だった。



「あ、鈴木さーん」



教室に入ってきたのは、この間私を呼び出した三人のうちの一人。
今日は一人なのか、と特に気にしないで帰る用意をしながらも、機嫌が良さそうな態度を変に思う。



「こないだはごめんねぇ?」



無駄に甘ったるい声。
謝るくらいなら最初からしなければいい。
そう思ってから、さっきの夏焼先輩の謝罪を思う。
そしてこの人の態度。

あぁ、なんか嫌な予感がする。



「罰ゲームだなんて知らなかったからさぁ。勘違いしてたの、ごめんね?」



罰ゲーム。
その言葉に、目の前がくらくらしてくる。



「そりゃそうだよねぇ。夏焼先輩があんたなんか本当に好きになるわけないってのに。ま、それだけ。じゃあね」



好きなことをペラペラと。
全部残して。
私の心に傷を残して。



どれくらい立ち尽くしてたんだろう。



気づいたら、最終下校時刻で。



「そっか…『ごめんね』か…なるほどね…」



そんな言葉が口から溢れていくのと、目から涙が流れるのは、ほとんど同じタイミングだった。



end

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