(`-д千)< ファンタジースター!
□ビタースイート
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頬をくすぐって過ぎていく
心地のいい夏の夜風。
穏やかな海を進む船では
今晩も明るい宴の笑い声
明るい輪の中を
手を取り合って離れていく影がふたつ
行き着いたのは縄ばしごのうえ
ふたりの秘密基地
霞んだ満月が照らし出す姿
片方は無造作に
三本の刀を立て掛けて
酒瓶を片手に
自分を照らすそれを仰ぐ
もう一方は少し火照った顔で
隣の男の横顔を盗み見る、わたし。
『 綺麗 』
ほんとうに
あまりに綺麗な彼に見惚れて
そう声を洩らした
「 ――綺麗だな…月 、 」
わたしが言ったのは
月のことなんかじゃない
解ってるはずなのに
ずるい奴
そう思ってもう一度
盗み見た横顔は
ふっと笑って
けれどどことなく
寂しさを見せていて
やっぱり綺麗で
愛しくて意地らしくて
きっと夢を誓った
あの女(ひと)のこと
考えてるんだろうって
悔しくて