メカクシ
□はじめまして
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「・・・はじめまして。私、久世 奈子です。皆にはクゼって呼ばれたりナコって呼ばれたりしてます。これからよろしくお願いします。キサラギさん」
そう言って、少女はぺこりと頭を下げた。
肩にかかっていた長い髪が垂れて、カーテンみたいに見える。
オレはというと、その丁寧な自己紹介にうろたえてしまっていた。
「ああ、えっと・・・・・」
「もうっ!お兄ちゃんも自己紹介しなきゃ!・・・ごめんなさい、クゼさん。お兄ちゃんずっと家にいたんで人との会話になれてないと言うか・・・・」
「お、おいっ!お前・・・・・」
お前、最後の部分は言わなくていいだろ。
クゼはモモを見て、言う。
「大丈夫だよ、モモちゃん・・・・。私も初対面の人と話すのって・・・苦手だし。未だにあんまり慣れてないから・・・・・」
「だから、大丈夫」とクゼは念を押すように言った。
その言葉はどうやら本当らしい。オレより先に自己紹介を済ませたモモとは、会話はできている。が、若干の遠慮がまだあることがわかる。
クゼはどうやら少しポーカーフェイスなところがあるらしい。
はじめは初対面だからかと思ったが、付き合いの長そうなキドやカノにもそうだ。
その、何を考えているのかがよくわからない目が、オレに向けられている。
「・・・・あの、ええと、とりあえずよろしく」
「それだけー!?」とモモから不満の声がもれたが気にしない。
クゼはオレが精一杯なのをどうやらわかってくれたらしく、「こちらこそ」と言った。