夢2

□同じ場所と違う視線の先
1ページ/1ページ


いつもより空に近い場所で食べるおにぎりは、何故かいつもより美味しく感じた。

空に近いこととおにぎりの味が関係しているはずはないからきっと気分の問題なんだと思う。病は気からとか何でもかんでも脳のせいだという言葉をよくテレビで聞く。それと同じなんだ。気分次第ですべてが変わる。ここが渡り廊下の屋根?でも、私が楽園だと思えば楽園だ。

「やっぱり心は偉大だなぁ」なんてわけわかんないことを言いながらもう一つのおにぎりに手を伸ばす。と、なんとなんとおにぎりが転がって落ちていくではないか!おむすびころりんならぬおにぎりころりんだよ!そういえば、おにぎりとおむすびの違いってあるの?

屋根から飛んだ・・・というか飛び降りたおにぎりに手を伸ばす。せっかくお母さんがつくってくれたのに!と。すると・・・・ぱしり、と誰かがおにぎりをつかんでくれた。その人は屋根の上の私を見て「落ちるぞ」と呆れたような顔で言った。


「本当にありがとう、蒼馬くん。蒼馬くんは神様だね」

「いや、俺はおにぎりを受け止めただけで・・・・」

そこで蒼馬くんは黙ってしまった。私はなんとなく、彼がなんと言いかけたかわかってしまった。

「・・・・・・・・にしきちゃんかと思った?」

嫌なやつ、とか思われたかな。言わなければそんなこと考えなくてすむのに。私って馬鹿だなぁ。蒼馬くんは私の言葉を無視して、

「・・・・何でここで食ってたんだ?」

と言った。そんなの、そんなこと決まってるのに。私は、

「さあ。なんかそういう気分だったんだよね」

と笑って見せた。彼の目は空に向いている。彼は私を見ない。なんとなくそうなるとはわかっていたけど、悲しいものは悲しいな。いくら同じ景色を見たって私は彼女にはなれない。そのことに気づいてしまうと、途端にこの見慣れない景色は無意味なものになってしまった。おにぎりにかぶりつくと塩のしょっぱい味がした。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ