Treasure

□いつの間にか
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「それにしても、結構繁盛してるよねうちの喫茶店」

「そうだね。メイドとギャルソンなんて、最初聞いたときはありきたりだと思ったけど」


「メイドとギャルソンは男と女のロマンなんだよ!」


「はいはい。それで?どこ行きたいの?」


「えっ、えっと…。とりあえず一通り見て回ろうかなって」


「そう。じゃあ行こうか」


「うん。って、ちょっ、周助、手!手ぇぇ!!」


自然な流れで手を繋ぐと、何やら騒ぎ始めた。
まぁ、ここ何年間も手なんて繋いでないからね。

「嫌?」

「嫌、じゃないけど…」

「じゃあこのままね」

「……」

なぜか黙ってしまった。
もっと騒ぐと思ったんだけどな。

「…あ、あのさ」

「ん?」

「花火大会の時は、繋いでくれなかったよね。手」

「えっ、…あぁ、うん」

本当は気づいてたんだ、真実が手を繋ぎたがっていることに。

でもあの時は、こんな気持ちにならなかったんだ。

「…あのね、真実」

「まっ、いいけどさ。にしても周助の肌スベスベー!フヘヘ…」

「……離すよ」

「ごめんなさい!」


まったくこの子は…。
まぁ、いつも通りと言えばそうなんだけど。


「あ!周助、お化け屋敷入ろーよ!思わずキャー!怖ーい!!とか言って抱きついちゃっても許してね!」


「真実って、ホラー系平気じゃなかった?」


「チッ、バレたか」

「あのねぇ…。……いいよ、入ろうか」

「えっ!?いいの?」

「うん」

真実の嬉しそうな顔を見たら、今回だけだよとは言えなかった。

それは何でかなんて、もう決まってるんだ。


「…なんか調子狂うなぁ」


「何か言った?」
「ううん、何でもない。早く入ろ!」
「うん」

真実がボソッと言った言葉、本当は聞こえてたのに聞こえないフリをした。







調子が狂うのは、こっちの方だ。









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