明日の未来(リアル)

□2話「出来事」
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地下鉄のきっぷうりばに着いた彩香。


路線図を眺める。

縦横無尽に広がっている東京の地下鉄網。

数は全13路線。世界でも有数の地下鉄都市の東京。

高田馬場駅は路線図でいうと左側、つまり西に位置するところにある。

網の目の様に広がっている地下鉄路線図を見ながらどこに向かうか迷っていた彩香。



「あの…、すいません…」

突然、後ろから声をかけられた。

振り向くと、頭にリボンをしている女の子がいた。

歳は彩香と同じぐらい。

「あの…、九段下(クダンシタ)はどうやって行けばいいんですか?」

不安そうな声で彩香に聞いてみる女の子。


「九段下?、九段下ならここから4つ目の駅よ」

丁寧に教える彩香だったが、女の子の様子が…

「えっと…、…4つ目、4つ目…?」

慌てて地下鉄路線図を見る女の子。

まず自分がどこにいるか分からないらしい…。


だんだん不安になってきた…。


こうゆう人を見ると彩香は放って置けない。

まして、同い年で今にでも泣きそうな瞳…。


彩香は思いきって女の子に言ってみた。

「良かったら連れてってあげるよ」

「え?」


目が点になる女の子。


「大丈夫大丈夫。私、地下鉄には詳しいから」

「で、でも…」

「私も九段下に行こうと思ってたところだからさ。私が連れてってあげる」


戸惑っている女の子だったが、しばらく考えて、

「…お、お願いします」

と、答えた。


「私は水無月彩香よ。あなたは?」

「…えっと、…」

なぜか考え込む女の子。


「?、どうしたの?」

「え、いや…、…わ、私は、…えっと、…あ!、チカって言います」

「チカ…なるほど。よろしく、チカ」

笑顔で答える彩香。チカも戸惑いながらも微笑んだ。


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「9…、8…、7…、」

カウントする竜神。


「3…、2…、1…」


午前9時。


辺りを注意深く見渡すが、特に変わった様子はない…。


耳に付けてる無線機から色々と声がしてきた。


【こちら第一班、異常無し】

【第二班、こちらも異常ありません】


どこも異常はないようだ…。

【おい、所轄っ、異常無いのかっ!】


急にデカイ声が無線機から聞こえてきた。

今回の事件の責任者、大内(オオウチ)管理官からだった。

慌てて無線機に向かって報告する。


「こ、こちら青山、異常ありません」

【全く…、ちゃんと報告しろ、青山】

「すいません…」


なんで俺だけ怒られるんだ…。俺以外にも所轄はいるはずなのに…。


ちょっと不機嫌になる竜神。

【引き続き、駅前周辺を警戒しろ、…】

大内管理官が言った、その直後だった。


【ロータリー広場に不審人物を確認っ!】

無線機に響いた声は第二班の捜査一課からだ。


【第二班と所轄、ロータリー広場の不審人物を確認しろ。第一班はその場に待機】


ロータリー広場に目を向ける竜神。

すると、エレベーター近くにキャップを被った二人組の男がいた。


竜神はすかさず大内管理官に報告する。

「エレベーターの近くに二人組の男がいます。キャップを被った」

【待て青山、迂闊に近づくな。第二班、報告は?】

【足元にアタッシュケースがあります】

竜神も確認する。

確かに足元にアタッシュケースがある。


…もしかして、あの中に…。


【全捜査員に次ぐ、エレベーター前にいる二人組の男が爆弾を持ってる可能性がある…、十分注意せよ!、こちらから指示があるまで待機だ】

大内管理官からの一言で、捜査員達に緊張がはしる…。



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電話をかけること、五回目…。


【も、もしもし…?】

小声で電話口から聞こえてきた。

やっと彼女が電話に出だ。

「もしもし、由香理(ユカリ)、今どこだ!?」

【え、えっと…、その…】


由香里の様子がおかしい…。淳志は嫌な予感がした…。


「どうしたんだ、由香理?」

【…、…】

電話口から他に誰か聞こえる。

「由香理?、由香理!」


何か言い争っているみたいだ。


【おも…どう】

何か聞こえるが、聞き取りにくい…。


【ちか…、…さん】

「由香理!、どうしたんだ、由香理!」

【表参道(オモテサンドウ)…!、…地下鉄…!】

途中で電話が切れてしまった。


「もしもし、由香理?、もしもし!」


淳志はすぐに由香理にかけ直す。


しかし、いくらかけても電話に出ない…。


全身からとてつもない冷や汗が湧き出て来た…。


まさか…、…誘拐…!?
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