明日の未来(リアル)

□3話「午前11時前:ゲーム開始」
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「…記憶喪失…、なの?」

「う、うん…」

九段下駅のベンチに座って話す彩香とチカ。


「自分は誰なのか…、どこに住んでいたのか…、…何も分からないの…」

チカは視線を下げる。


目の前に困ってる人がいるのに…、私に何か出来ないの…?


そう思った、彩香はチカに言ってみた。

「ねぇ、チカ。何か覚えてない?、どんな小さい事でも言いから」

「…覚えていること…」

考え込むチカ。


「…?、銀座(ギンザ)?」


チカはボソッと言った。


「銀座?、何か思い出した?」

「い、いや、なんとなくだけど…、誰かと行ったような気がするの…」


それを聞いた彩香は、すぐに行動に移した。


彩香は立ち上がり、チカの手を引く。


「ど、どうしたの、彩香っ」
「考える前に先に飛び込め、だよ」

「え?」


チカには彩香が言った意味が分からなかった。


ちょうどその時、ホームに電車が入ってきた。


彩香はチカを連れて、電車に飛び乗った。



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竜神は高田馬場駅の地下鉄東陽(トウヨウ)線ホームにいた。

あれからしばらくして、大内管理官から竜神に連絡があった。


【今すぐ、永田町(ナガタチョウ)に向かってくれ。陽菜ちゃんの目撃があった】


その連絡があり、竜神は電車で向かう事にした。


車で向かった方が速いが、陽菜の件は捜査一課も所轄も誰も知らない。

仕方なく、地下鉄で永田町へ向かう。

しばらくすると、ホームに電車が入ってきた。竜神はすぐに乗り込んだ。



高田馬場駅から4つ目、九段下駅で降りる。


そこから紫色の水天宮(スイテングウ)線に乗り換え、永田町へ向かった。


竜神は水天宮線に乗っている中、怪しい男二人が目に入った。

黒い服装に深く被った帽子。

何かこそこそと話していた。


竜神は怪しいと思いながらも、とにかく陽菜の事を考えていた。



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「あれ…?、表参道ってどこだ…」

路線図とにらめっこする淳志。

淳志はあまり地下鉄に乗ったことがなかった。


淳志が住んでいるのは東京の西部、西東京市。首都圏から離れていた。



ずっと路線図を見ていると淳志は頭が痛くなってきた。


色々な路線が張り巡らされている、東京の地下鉄。

地下鉄だけでも13路線もある。


淳志には、どれがどれだが分からなかった。


「くっそー…、表参道ってどこだ…?」


なんとか表参道の場所を見つけ、自分の位置を確認する。

次の大手町(オオテマチ)で緑色の地下鉄・湯島(ユシマ)線に乗り換えれば表参道に着くと分かった。


しばらくして、電車が大手町に着く。


ドアが開いた瞬間、走り出す淳志。


階段を上がり、湯島線のホームへと走る。


湯島線ホームへたどり着くと目の前に電車が止まっていた。


淳志は走った勢いで湯島線へ飛び乗る。


飛び乗った瞬間、ドアが閉まり、電車が走り出した。

辺りを見回すと、また冷たい視線が淳志に向けられる。


淳志は頭を下げ、大人しくドアの近くに立っていた。
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