明日の未来(リアル)

□最終話「明日の未来」
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高校周辺にはたくさんの警察官と消防隊の人達でごった返していた。


「刑事さんよ」

竜神と唐崎が外に出た。


「竜神でいい…」

「竜神さん、これかどうするんだ?」

「…分からない、…だけどとにかく、前に進まないと…」


竜神の携帯が鳴る。


相手は大内管理官。


「もしもし?」

【青山!、君は何をしてる!】


かなり怒ってる様子の大内管理官。


「いいえ、別に」

【まあいい…、それよりも緊急事態だ!。首都東京に殺人ウイルスを巻くと、警視庁に脅迫文が送り付けられた…。各警察署に広域緊急配備が発令された】


竜神は冷静に聞いていた。

「そうですか…」

【青山、今すぐ署に…】

「管理官」

【なんだ…?】

「自分は…、自分の道を進みます」

【何!?】


妙な空気が流れる。

「もう、あなたの指図は受けません」

【…青山、君は何を言ってるのか分かっているのか?】

「ええ、分かってますよ。大内管理官…」


逆らう竜神。竜神の脳裏には半年前の事を浮かんでいた。



永谷英斗を逮捕したときだ。

半年前、英斗を逮捕するのはこれで三回目。


だが今回は送検されることはなかった。それどころか誤認逮捕と言う結果になった。


その責任として、特別捜査課から所轄へと移動させられた。


一体なぜか…。理由は分からないが誰がやったかは分かっている。


…全ては大内管理官が仕組んだことだ…。


【…、それが、君の答えか…】

「そうです、大内管理官」

【…愚かだ…】


鼻で笑う大内管理官。


竜神は冷静でいる。


「いいえ、愚かなのはあなたです…。後悔しますよ、俺を特別捜査課から外したこと…、俺を所轄へ移動させたこと…」

【フン、お前に何が出来る…!】

「さあ、分かりません…。…でも、決して諦めません!、絶対に…!」


竜神は携帯を切る。


「ずいぶん、強気だったな。今電話してたのはお偉いさんだろ?」

唐崎が興味深そうに言う。

「雰囲気的にヤバい感じがしたが、大丈夫なのか?」

「あんたに心配されるほど、俺は弱くないんでね…」

「ほう、ついに開き直ったか」

歩き出す竜神。それに続く唐崎。


「こっから先は関係者以外、立入禁止だ」

「そんなもの、俺様には関係ない!、こんなビックなネタ、最後の最後まで取材させてもらうぜ!」

「なぜだ…?」


唐崎は竜神に人差し指をビシッと差す。

「真実をこの目で見る。そして、その真実を世に知らせる。…それが、俺様の仕事だ」

「なるほどな…、うっとうしい記者だ」

「フン…、良く言われる」



二人は急ぎ足で駅の方へ向かった。




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電話を切った志帆。携帯を淳志に返す。


「ライナーはなんて?」

「明日の未来を守る、だって」

「未来…?」


志帆は自分の携帯を出し、竜神に電話をする。


「もしもし?、…英斗の居場所が分かったわ」


電話口から冷静な声で答える竜神。

【それで、どこだ?】

「…“東京タワー”…、そこに英斗と陽菜がいる」

【分かった、すぐに向かう】

「こっちも向かうわ。東京タワーの下で合流しましょ」

【ああ…】


電話を切り、淳志と由香理の方を向く。


「それじゃあ、行こうか」

「どこにです?」


由香理が聞いてみる。


「明日の、未来に…」


微笑む志帆だが、右目は真剣な眼差しをしていた。




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…ウイルス散布まで、
あと、40分…



地下通路から地上に出る彩香とライナー。


地上に出ると辺りは薄暗く、空はブルーで、東京タワーがくっきりと赤く光っていた。


「さっき、誰と電話してたんですか?」


彩香が歩きながらライナーに聞く。

「君の仲間に電話をしてたんだよ」

「仲間?」


ライナーと彩香はゆっくりと東京タワーへ向かった。


「あそこに、陽菜がいるんですね」

「そう。…そして、私の友達もいる…」


東京タワーを見上げるライナー。

その目は、覚悟を決めた目をしていた。




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…ウイルス、散布まで、
あと、30分…


【東京タワー前】とかかれた交差点に5人が集まった。


左から唐崎、竜神。

右から志帆、淳志、由香理。



「久しぶり、竜神」

「ああ、久しぶりだな」

顔を見合わせる竜神と志帆。


「あんたらも、この事件の真実を見に来たのか?」

唐崎が淳志と由香理に聞いてみる。


「いや、何て言うか…、まあ、そんな所」

「あれ?、もしかして、フリーライターの唐崎さんですか?」

由香理が訪ねる。


「ああ、俺が唐崎だが…俺を知ってんのか?」

「はい、唐崎さんの雑誌、すごく好きなんです」

「そうかそうか、じゃあ今度の雑誌もよろしくな」



「どうやら、集まったみたいだな」


目の前に阿蘇が立っていた。

竜神が阿蘇と睨み合う。

「英斗はどこにいる?」

「東京タワーの特別展望台にいるはずだ」

「そうか」


「…アイツを止めてくれ…」

「え…」

「俺にはアイツを止められねぇ…。でも、あんたたちだったら止められるかもな…」

阿蘇は下を向く。


「大丈夫だ。絶対に止めてみせる…!」


そう言って、淳志を先頭に5人は東京タワーの中へ入って行った。


阿蘇はその後ろ姿を見送っていた。
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