明日の未来(リアル)

□「これがリアル」
1ページ/1ページ

ーーー…数日後…ーーー



高田馬場駅のロータリー広場、時計台にぽつんと立っている一人の少女。


「あーあ…、暇ぁ…」


背伸びをする少女。


「ようっ!、水無月彩香」


人差し指をビシッと差す男。

「ずいぶん、機嫌が良いですね、カラさん」

「ああ、そうだ。これを見ろ!」


唐崎が出したのは、いつも唐崎の書いた記事が載っている雑誌。

そこには『特集!!、東京の明日の未来!!』と書かれていた。


「これ、カラさんが?」

「ああ、そうだ。どうだ?、いい記事だろ!」


笑みを浮かべる唐崎。

彩香は雑誌をじっくり見た。


あの日の出来事が細かく簡潔にまとめてある。


…黒幕は警視庁の管理官!…

…カナリアウイルスの即廃墟を!…


さすがカラさん、と彩香は思った。


「じゃ、その雑誌やるから。またな!」


雑誌を彩香に渡し、走り去る唐崎。


しばらく雑誌を読む彩香。

ふと、顔を上げると駅前に一人見覚えのある男の人が立っていた。


「淳志ーっ」

どこかで聞き覚えのある女の人の声。

「よ、よう、由香理」

「ごめん、待った?」

「い、いや、俺もさっき着いたばかりだから…」


「嘘ばっかり…」

陰口を言う彩香。


それもそのはず、彩香が覚えてる限り、淳志は今から30分前からあそこにいた。

「ごめん、遅れて…」

「大丈夫大丈夫。それじゃあ、行こうぜ」


淳志が手を差し延べる。


「…うん」

由香理は頬を赤くして、淳志の手を握った。


二人は駅の中へ消えて行った。



うらやましそうに彩香は見ていた。


そこに竜神と陽菜が来た。

「久しぶり、彩香」

「陽菜、元気そうで良かった」


手を握る彩香と陽菜。


「竜神さん、ありがとうございます」

「いいよ。それじゃあ俺はこれから仕事だから、今日は楽しんで来て」


微笑みながら、竜神は立ち去った。


「ねぇ、陽菜」

「何?」

「今日はどこに行く?」

「うーん…」


考える陽菜。


「また、地下鉄に乗る?」

「いいね」

彩香が言うと、陽菜は嬉しそうに答えた。

「じゃあ行こう!」

「うん!」



彩香と陽菜は元気よく最初の一歩を踏み出した。




それを時計台の反対側にいた男の人が彩香と陽菜が立ち去るのを見ていた。



「その一歩から未来が動き出す…。

その一歩から未来が変わる…。

さて、私も、一歩を踏み出してみますか?」


ふと、空を見上げる。


…とても青く清んだ空。


「とても、良い空ですね…」


そうつぶやくと、ポケットから電話が鳴る。


「もしもし?、ライナーです」



…しばらく話すライナー。



そして電話を切り、ライナーはため息をつく。



「…全く、この世の中には、どれだけ愚かな人間がいるのか…」


再び空を見上げるライナー。



「さて、行きますか…。


…未来に向かって…」






これが…


明日の…


…未来(リアル)…








『明日の未来(リアル)』




END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ